不至必貧(至らざるも必ず貧し)(「商子」)
最近、どんどん貧乏になってきます。もちろん、わたしのことです。この国がどうかは知りません。

サン・ジョルディの日でクモ。おしゃかに言われて地獄に糸を垂らしているのもめんどくさいので、さぼって読書しクモっと。
誰もプレゼントしてくれないから、自分で新しい本を選んでみます。ん?「商子」?女の子の本かな。あるいはどこかの女性宰相?
・・・さっきから誰か糸を引っ張っているようだが、とりあえずほっとクモ。自己責任でクモ。
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今日は五十年ぐらい前の知り合いと飲み会。緊張しましたが終わるころはどうでもよくなった。
さてさて、「商子」ちゃんの本を読んでみます。
詩書礼楽善修仁廉弁慧。
詩・書・礼・楽・善・修・仁・廉・弁・慧。
詩経、書経、礼儀、音楽、善意、修学、仁徳、廉恥、明弁、知恵。
この十のものは何やらいいもののように見えます。特に建前を重んじる儒者ならこれらを求めるに違いない。だが、
国有十者、上無使守戦。国以十者治、敵至必削、不至必貧。
国に十者有れば、上(かみ)、守戦せしむる無し。国十者を以て治むれば、敵至りて必ず削られ、至らざるも必ず貧し。
国にこの十のものがあるなら、主権者は誰に守備や戦争をさせることができるだろうか。国がこの十のものを以て治められているなら、必ず敵対者が攻めて来て領土は削られてしまうだろう。攻めて来なかったとしても、必ず貧しいことだろう。
ええー、そうだったんですか。
逆に、
国去此十者、敵不敢至、雖至必却。興兵而伐、必取、按兵不伐、必富。
国この十者を去れば、敵敢えて至らず、至ると雖も必ず却(しりぞ)く。兵を興して伐たば、必ず取り、兵を按じて伐たざれば、必ず富む。
国がこの十のものを取りさってしまえば、敵対者はあえてやって来ない。やって来ても必ず退けることができる。こちらから軍を派遣して攻撃すれば必ず敵の領土を奪うことができるし、軍を用意しても使用せずに攻撃しなければ、必ず豊かになる。
国好力者、以難攻。
国、力を好むは、以て攻め難し。
この「力」は「兵」と「富」、軍事力と富力のことです。
国が「軍事」と「富」を志向するならば、その国は攻められづらくなるであろう。
以難攻者必興。好弁者以易攻。以易攻者必危。
攻め難きを以てするものは必ず興る。弁を好むものは以て攻め易く、攻め易きを以てするものは必ず危うし。
攻められづらいことを選ぶなら、必ず強くなる。一方、口先での議論を志向する者は攻められやすい。攻められやすいことを選ぶなら、必ず危機に陥るであろう。
口先だけの議論を好むものは、相手の謀略に乗せられやすいからです。
故聖人明君者、非能尽其万物也、知万物之要也。故治其国者、察要而已矣。
故に聖人明君なる者は、よくその万物を尽くすにあらず、万物の要を知るなり。故にその国を治むる者は、要を察するのみなり。
要するに、聖人とか明君と言われる人は、あらゆるものを知り尽くしているのではないのである。あらゆるものの要点を知っているのである。つまり、国をうまく治めている者は、要点を見極めているだけなのだ。
ところが、
今為国者多無要。朝廷之言治也、紛紛焉務相易也。
今、国を為す者は多く要無し。朝廷の治を言うや、紛紛として相易(か)うるに務むるのみ。
現代において、国政をリードしている者たちには、要点を知っている者は少ない。朝廷において政治を語る言論は、いろいろ互いに違うことを言い合うばかりである。
是以其君惛於説、其官乱於言、其民惰而不農。
是を以て、その君は説に惛(くら)く、その官は言に乱れ、その民は惰にして農せず。
こういうわけで、君主はいろんな説に迷ってしまうばかり、臣下たちは言論を争わせるばかり、人民たちはやる気が無くて農業に勤しまない。
ああ、これではもうおしまいだ。おしまいだ。それからどうなってしまうのか、は明日に致しましょう。
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「商子」農戦第三より。この本は「商君書」ともいいます。「商子」あるいは「商君」とは、戦国の時代、斉では孟子、楚には荘子が活動していたころ、法家思想を説いてまだ西方の中小国家に過ぎなかった秦国を富国強兵せしめた前四世紀の思想家・政治家、商鞅(しょう・おう)のこと。彼の言に託して法家の考えをまとめたのがこの「商子」の書です。法家といえば「韓非子」が有名ですが、その一時代前、「法家思想」が新しい社会思想として秦の国で社会実験的に現実化されはじめたころの荒々しい古典(もちろんもっと後世に付け加えられた部分も多い)です。「韓非子」なんか読んでると、現代のすぐれたみなさんは「当たり前だろ」と思うようなことしか書いてありませんが、こちらは「ええー、そうなんだ、だが、それは大人は言ってはいけないことでしょう、くっくっく」という新鮮な記述が多くておもしろい。ためにはならないと思いますけど。表で言ってはいけないことですからね。くっくっく。
ミネルヴァのふくろうのことが書かれているので読んでみてください。
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