齧缺問道(齧缺道を問う)(「荘子」)
肝冷斎の歴史は二十年近くあるので、必ず一回や二回この話をご紹介していると思うのですが、検索しても出てこないので、みんな忘れているに違いない、との確信を得た。

あわわ。われわれの正しい世界に、歯欠けやぼろ服がやってきたらどうするのか。それはあなたたちの心の中から出てくるぞ。
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すごく昔のことだと思いますが、もしかしたら今日のことかも知れません。
齧缺問道乎被衣。
齧缺、被衣に道を問う。
齧缺(げっけつ)が、被衣(ひい)のおっさんに「道」について教えてくれ、と言った。
「齧缺」は「歯が欠けている」ぐらいの意味でしょうか。「被衣」は「服を着ている」という意味か。いずれも人名です。もちろん架空です。
以下、せっかくですので、「齧缺」は「歯欠け」、「被衣」は「ぼろ服」と訳してみます。感じが出るのでは。
被衣曰、若正汝形、一汝視、天和将至。摂汝知、一汝度、神将来舎。徳将為汝美、道将為汝居。汝瞳焉如新生之犢、而無求其故。
被衣曰く、「もし汝の形を正し、汝の視を一にすれば、天和まさに至らん。汝の知を摂り、汝の度を一にすれば、神まさに来舎せん。徳はまさに汝の美と為り、道はまさに汝の居と為らん。汝の瞳、焉として新生の犢の如く、その故を求むる無かれ」。
ぼろ服のおっさんは言った、
「おまえの姿勢をまず正すことじゃ。そして視線を一か所に集中する。そうしていると、天の与える和やかな気持ちが湧いてくる。おまえの知覚をコントロールし、おまえの考えを一つのことに集中する。そうすれば、神秘の力がおまえの体(「舎」)にやってくるぞ。
世界の力(「徳」)はおまえを立派にする。世界の根源(「道」)はおまえの安住する場所になる。おまえはその時、生まれたての子牛のように、ありのままを見ていればよい。その理由だとか発生機序だとかを知ろうとしてはいかんぞ」
「道」とは何か、を考えてはいけない。これが大前提。あるがままで「道」に安住することができるであろう。いい事言ってるではありませんか。
ところが、
言未卒、齧缺睡寐。
言いまだ卒えざるに、齧缺、睡寐せり。
ぼろ服のおっさんのコトバがまだ終わっていないうちに、質問した歯欠けのやつは眠ってしまっていたのだ!
被衣大悦、行歌而去之。
被衣大いに悦び、行歌してこれを去る。
ぼろ服のおっさんは大いに喜び、歌をうたいながらどこかに行ってしまった。
その歌に曰く、
形若槁骸、心若死灰。真其実知、不以故自持。媒媒晦晦、無心而不可謀。彼何人哉。
形は槁骸の若く、心は死灰の若し。
真にそれ実知すれば、故を以て自持せざらん。
媒媒(ばいばい)晦晦(かいかい)、無心にして謀(はかりごと)すべからず。
彼、何びとぞや。
「媒媒」は「煤煤」と同じですすけている、黒い、ということでしょう。「晦晦」は(新月の夜のように)暗闇である、の意。
こいつのからだはガイコツのように生きておらず、こいつの心は灰のように死んでいる。
ほんとうに、ほんとのことを知っていれば、理由がどうとか考えるはずがない。
黒い黒い闇、暗い暗い影の中、なんにも考えないし感じない。
―――こいつは一体、何ものじゃ!
歯欠けは、ぼろ服おやじの説明が当たり前なので退屈で寝てしまったのではなく、どんなときにも寝るんだと思います。すでに「道」に安住しているのでしょう。
人工知能で浮いた時間はまずは居眠りすることに充てては如何だろうか。(←コラム風)
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「荘子」知北游篇第二十二より。明日が来てしまいます。お盆明けの月曜日。こちらはいつもどおりで何か言われても居眠りしてしまうと思うのですが、緊迫した感じの人たちが帰ってきて、「充電した」「めりはりを利かせる」とか言って怒ってきたらどうしよう。怒ってないけど怒られているような気がするんではないかと思います。そうすると、ホントに怒られたときにはどうなるのか。
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