餓狼見肉(餓狼肉を見る)(「商子」)
自分に起こった悪いことはガマンするんです。ガマン、ガマン。社会に起こったことはどうすればいいのか。例えば孤立死の増など自分に起こるならガマン、ガマンだが。

むかしは目をぎらぎらさせて温泉とか行ってたものだが、最近はそんな昭和・平成の欲望もないでワン。
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すごい古代のことですが、
昊英之世、以伐木殺獣。人民少而木獣多。
昊英(こうえい)の世には、以て木を伐り獣を殺す。人民少なくして木獣多ければなり。
昊英の時代には、木を伐り出し、獣を見つけては殺していた。人民が少なくて木や獣が多い時代だったのである。
ふつうのチャイナ神話は次の黄帝から始まります。昊英に触れているのは「帝王世紀」という伝説集とこの「商子」の記述ぐらいだそうです。
黄帝之世、不麛不卵。
黄帝の世には、麛(べい)せず、卵(らん)せず。
「麛」(べい)は「鹿の子」、「卵」は「鳥の子」、「麛せず卵せず」とは小鹿やタマゴのうちに穫ったり食べたりしない、という意味です。資源保護の観点から重要です。
その後の黄帝の時代には、鹿の子どもを捕獲したり、鳥のタマゴを取ったりしなかった。
黄帝の時代がだいたい紀元前2600年ぐらいです。黄帝の時代は生産性が低くて無駄遣いができず、
官無供備之、民死不得用槨。
官はこれを供備する無く、民は死するといえども槨を用うるを得ず。
お役所でさえこれら(小鹿とタマゴのごちそう)を具備しているところはなく、人民は死んでしまっても「外棺」を利用することはできないという社会だったのだ。
事不同、皆王者、時異也。
事同じからざるもみな王者なり、時異なれるなり。
実態は違うように見えても、昊英も黄帝も王者である。違う部分は時代が違うということである。
黄帝さまの一代前、
神農之世、男耕而食、婦織而着。刑政不用而治、甲兵不起而王。
神農の世には、男耕して食らい、婦織りて着る。刑政用いずして治まり、甲兵起こらずして王たらん。
神農さまが支配しておられた時代には、男はただ耕作をして食べ物を作り、女はただ針仕事をして着るものを求めてればいい、刑罰も政治も不必要で、そんなものが無くても世の中は治まり、防具や武具が無く(武力に訴えなく)ても王者になれたのだ。
神農既没、以彊勝弱、以衆暴寡。
神農既に没し、彊を以て弱に勝ち、衆を以て寡を暴す。
神農さまがお隠れになられてからは、強い者が弱い者を押さえ付け、多数が少数に暴力を振るっている状態となった。
故黄帝作為君臣上下之義、父子兄弟之礼、夫婦妃匹之合、内行刀鋸、外用甲兵。故時変也。
故に黄帝は君臣上下の義、父子兄弟の礼、夫婦妃匹の合を作為し、内には刀鋸を行い、外には甲兵を用う。故に時変ずるなり。
このため、神農の次の黄帝は、君主と臣下、上司と部下の関係、父と子、兄と弟の礼儀、夫と妻など男女間の交合といった制度を作り、国内では刀やノコギリで刑罰を行い、国外ではかぶとや兵器を使って国際政治を行った。ここでも、時代の変化があったのだ。
故以戦去戦、雖戦可也。以殺去殺、雖殺可也。以刑去刑、雖重刑可也。
故に、戦を以て戦を去れば、戦といえども可なり。殺を以て殺を去れば、殺といえども可なり。刑を以て刑を去れば、重刑といえども可なり。
こういうわけで、戦争を無くすための戦争であれば、戦争であってもしてよろしい。殺人を無くすための殺人であれば、殺人であってもしてよろしい。刑罰を行う場を無くすための威嚇としての刑罰であれば、罪に比して重い刑罰であってもしてよろしい。
昔之能制天下者、必先制其民者也、能勝彊敵者、必先勝其民者也。
昔のよく天下を制する者は、必ず先ずその民を制する者なり、よく彊敵に勝つ者は、必ず先ずその民に勝てる者なり。
古代より、天下を制圧する者は、必ずまずは自分の領土の民を制圧しているし、強い敵に勝てる者は、必ずまずは自分の領土の民に勝った者である。
勝民之本在制民、若冶於金陶於土也。本不堅則民如飛鳥走獣、其誰能制之。
民に勝つのもとは民を制するに在り、金に冶し、土に陶するがごときなり。もと堅からざれば、民は飛鳥走獣のごとくそれ誰かよくこれを制せんや。
民に勝つ、ことの前提として、民を制圧していなければならない。金属を溶かして成型し、粘土をこねて形にするようなものである。前提がきちんとできていないと、民は飛ぶ鳥や走るケモノのように、これを制圧することができない。
そのように民を制圧して、
民之見戦也、如餓狼之見肉、則民用矣。
民の戦を見るや、餓狼の肉を見るが如くすれば、すなわち民用いうるなり。
民が戦争に対して、(そこで手柄を立てて富貴になれるチャンスだと)飢えたオオカミが肉を見るような状態にまですることができれば、その民は用いることができるであろう。
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「商子」(画策巻十八)より。人民が餓狼のようになれば勝利できるでしょう。でもうまくエサを与えないと、こちらにとびかかってくるかも。
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