助順駆逆(順を助け逆を駆る)(「墨余録」)
何かに憑りつかれているかのようだ。

知識人ぶったやつは、くろねこの力でやっつけてやるニャー!
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清代のことでございますが、上海・松江の試院(試験会場)には、数階建ての高層の建物(「楼」)があった。
非学使者至、人不敢登。
学使者の至るに非ざれば、人あえて登らず。
中央から試験官が赴任してきた時以外、誰もその建物の上階にあがろうとはしなかった。
中央からお見えになられるような権威ある方は大丈夫だが、ふざけた者、下らぬ者が足を踏み入れると、この建物は不吉なことを招く、といわれていたからである。
庚申(1860、咸豊十年)の年の夏五月、
賊陥郡城、群臥楼上、夜輒聞戦闘声、有自夢中驚起、堕楼死者。城館煮飯皆黒如墨。
賊郡城を陥し、楼上に群臥せしに、夜すなわち戦闘の声を聞き、夢中より驚起して堕楼して死する者有り。城館に飯を煮るにみな黒きこと墨の如し。
太平天国の賊軍が郡府の所在地を陥落させた。賊兵たちは楼の階上にごろごろと寝ていたが、夜中に突然戦闘の音を聞き、夢の中から目を覚まして起きてきて、そのまま楼閣から落ちて死んでしまうものがいた。また、建物でご飯を炊くと、すべて墨のように真っ黒になってしまうのである。
さらには、
毎於深夜、輒見城上火把、照燿如昼、疑官軍已登城、争相逃竄、頃復寂然。
深夜におけるごとに、すなわち城上に火把の照燿すること昼の如きを見、官軍すでに登城せりと疑いて、争いて相逃竄して、頃復に寂然たり。
真夜中になると、突然庁舎の上に火のついたたいまつが、まるで昼のような明るさで照り輝くので、賊軍は官軍がもうやってきたのかと疑い、争って逃げ惑うのだが、そのうち収まって静かになってしまうのであった。
そんなわけで、
群賊以終夜不得息、遂棄城去。
群賊以て終夜息うを得ず、遂に城を棄てて去れり。
太平天国どもは一晩中休憩することができず、とうとう町を棄てて逃げ出してしまった。
後聞之土人、云是必楼中狐仙所為、蓋助順以駆逆也。
後にこれを土人に聞くに、云う、これ必ず楼中の狐仙の為すところ、けだし順を助け以て逆を駆るなり、と。
数年後、地元民に聞いてみると、彼らが言うには
「そのような不思議な事件は、楼閣の中に住まわれておられるキツネの精のなすところであった。そのキツネは従順な者を助け、悪逆の者を叩き出すからである」
と。
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清・毛祥麟「墨余録」巻三より。キツネ仙人でも従順な者を助け、悪逆なやつらを駆逐してくれます。いわんや人間をや。
国のかたちをかえようとする者は、「順」なのだろうか「逆」なのだろうか。
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