銅鼎破缺(銅鼎破れ缺けたり)(「清波雑志」)
わしはもう壊れたナベです。使い物にならないのです。・・・と思いきや、なんてことはない。

ヒマに見せかけて実は使い物にならない、というやつは多いでヒン。たいていそうだと思わねばなりませんでヒン。
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宋の時代のことですが、
毘陵士大夫有仕成都者、九日薬市見一銅鼎。
毘陵の士大夫、成都に仕える者有り、九日の薬市に一銅鼎を見る。
江南出身の士大夫で、四川の成都に赴任した者がいて、毎月九日の成都名物、薬市を見に行って、銅の足つきのナベを見つけた。
已破缺。
已に破れ缺けたり。
もう壊れて穴が空いている。
骨董品としての価値があるかも、と思ってじろじろ見ていると、
旁一人、賛取之。
旁らの一人、これを賛取す。
かたわらにいた別の人が、「これはいいですなあ」と称賛しながら手に取った。
既得叩何用。
既に得て何に用うるやを叩く。
その人が買い取ったところで、「(そんな壊れたものを)一体何に使うのですか」と質問してみた。
その人、いささか呆れたように、
帰以数炉炷香、環此鼎、香皆聚於中。
帰りて数炉の炷香を以て、この鼎を環(めぐ)らせば、香みな中に聚まる。
「家に帰って、お香を何本か、この足つきナベを囲むように焚いてやれば、香りがすべてその中にあつまるではありませんか」
「へー」
そこで、残っていたのを買い求めた。
試之果然。
これを試みるに果たして然り。
験してみたところ、確かに足つきナベに煙が集まって、いい匂いになるのであった。
乃名聚香鼎。初不知何代物、而致此異。
すなわち「聚香鼎」と名づく。初め知らず、何れの代の物にしてこの異を致すやを。
「香りを集めるナベ」という名前のものである。いったいいずれの時代のもので、こんな不思議な効力があるのか、なかなかわからなかった。
ずっとわからなかったと思いますよ。
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宋・周煇「清波雑志」より。いかにもサクラ役の人の行為に騙されて買わされたぽい気がしませんか。破れたナベの周りでお香を焚けば、ふつうの煙はナベの穴に入ってしまいそうなものです。
だが、騙されていても気づかない、いや、気づかないようにしている人、自分が騙されたということを認められない人は多いのだ。なんと悲しいことではないか。
この話は騙してるんではなくて本当だと思いますよ。いな、むしろ騙されたと思ってやってみな、か。
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