晨炊釜鳴(晨炊の釜鳴る)(「黙記」)
みなさん、釜がすごく鳴ったらびっくりしますよね。

毎日雨ばかり降っていると、交通機関を利用してどこかに行ってしまいたい、と思うものですが、ブタタクはダメだな。運賃が高い上に目的地には絶対につかないというサービスだ。
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北宋のことなんですが、首都・開封郊外の雍丘に舟が舫われていて、これには鄭家の留守家族が乗っていました。主人の鄭紓は名勝・狄青の幕僚として南方に赴任しており、長男の鄭獬は科挙試験を受けに開封に出かけていた。
ある日の朝、
忽舟尾晨炊釜鳴、声甚厲。震動両岸、挙家不知所為。
忽ち舟尾の晨炊の釜鳴り、声甚だ厲(はげ)し。両岸を震動し、挙家為す所を知らず。
突然、船尾のところにあった朝飯を炊くための釜が
うおん、うおん
と鳴り始めた。その音がものすごくでかく、舟を舫った川の両岸が震動するほどであり、舟に乗っていた鄭家の者たちはどうしたらいいかわからなかった。
「おくさま、どうしましょう」
「あたしに言ったてどうしようもないよ」
というのも、釜がうるさすぎて聞こえないぐらいなのだ。
うおん、うおん。
釜鳴未定、忽岸上亟尋鄭郎中船。
釜の鳴ることいまだ定まらざるに、忽ち岸上にしばしば鄭郎中の船かと尋ぬるあり。
釜の音が収まらないのに、突然今度は岸の上に「鄭郎中どのの船であるか」と尋ねる者が複数あった。
うおん、うおん
彼らはそれぞれ何か言っているのだが聞こえない。
「鄭郎中の船だけど何を言っているかわからないよ」
南来、附紓書、云已破賊、殺戮殆尽、走入渓洞。且議賞超遷矣。
南より来たるは、紓の書を附す。云う、「すでに賊を破り、殺戮ほとんど尽くし、渓洞に走入す。まさに賞して超遷を議せり」と。
南の岸に来た人は、声を張り上げても聞こえないらしいので、預ってきた主人の鄭紓の手紙を差し出した。(船上のひとがもらって読んでみると、)
「もはや反乱軍を破ることができた。賊軍どもはほとんど殺し尽くしてくれたわい。生き残りも山中や洞窟に逃げ込んで再起不能にしてやった。現在、わしの功績に対して特別進級を協議中である」
とあった。
「やどろく、やったじゃないの」
「奥様、おめでとうございます」
と大喜びしていると、
語次、又有北来報榜者馳至云、秀才昨日唱名而出、已状元及第矣。
語次に、また北より来たりて榜を報ずる者の馳せ至る有りて云う、「秀才昨日唱名して出で、すでに状元及第せり」と。
続いて、もう一人、北岸に来ていたやつは、試験の結果を報告しに来ていた。駆けつけていうには、
「こちらのお坊ちゃま、昨日、お名前貼り出されまして、なんと状元(首席)で合格でございます!」
「むすこもやった! あれ?」
「奥様、おめでとございます! あれ?」
いつの間にか、釜鳴りは収まっていた。
すなわち、
釜鳴蓋有為吉者。
釜の鳴るはけだし吉を為すもの有り。
釜が鳴ることには、いいことを知らせるものがあるのである。
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宋・王銍「黙記」巻中より。確かに極めて特異に吉を為すものはあるでしょう。あるいは極めて特異に為さないものもあるのでしょう。みなさんも釜が鳴ったら験してみてください。
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