佇立空傷魂(佇立して空しく魂を傷ましむ)(「高青丘集」)
明日は個人的にいやだなあ。でもこれから先、社会がもっといやなことになるかも。

だから早く逃げ出さないと・・・。だが、どこへ?
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元末のころのことですが、
路廻荒山開、如出古塞門。
驚沙四辺起、寒日惨欲昏。
上有飢鳶声、下有枯蓬根。
白骨横馬前、貴賤寧復論。
路は廻りて荒山開け、古塞の門を出づるが如し。
驚沙は四辺の起こり、寒日は惨として昏(くれ)なんとす。
上に飢えたる鳶の声有り、下には枯蓬の根有りぬ。
白骨は馬前に横たわり、貴賤なんぞまた論ぜん。
(狭い道が)ぐるりと荒れた山をめぐったところで道が開け、いにしえの関所か城砦のあったらしいところに出た。
四方から砂が吹き上げられて、寒々とした太陽は光無く暮れていこうとしている。
上空からは腹を空かせたトビの獲物を狙う声が聞こえ、地面には風に吹かれて転がっていく転蓬の根がごろごろしている。
まことに荒涼たる景色だが、その上、
おれの乗る馬の前には人骨が多数横たわっているのだ。社会の上層だった者も下層だった者も、もう区別などありはしない。
未来のその時にも、社会の上の方のひとたちも容赦されないのですぞ。・・・いや、でも、そのひとたちは大丈夫なようにするのかな。転がっているのは貧乏とか弱者とかふつうの人ばかりになるのかも。
不知将軍誰、此地昔戦奔。
我欲問路人、前行尽空村。
登高望廃塁、鬼結愁雲屯。
当時十万師、覆没能幾存。
応有独老翁、来此哭子孫。
知らず、将軍は誰ぞ、この地に昔戦奔せる。
我、路人に問わんと欲するも、前行ことごとく空村なり。
高きに登りて廃塁を望めば、鬼の愁雲を結びて屯(たむろ)せり。
当時十万の師、覆没してよく幾たりか存す。
まさに独りの老翁の、ここに来たりて子孫を哭する有るべきなり。
この地で戦って敗北した将軍の名前を知っているか。
わたしは地元民に訊いてみようと思うのだが、どこまで行っても人っ子一人いない空っぽの村ばかりだ。
高いところに登って見晴るかすと、あちこちに防御の土塁の跡があり、そこには幽魂たちの怨みの思いが集まった雲が、わだかまっているばかり。
かつて十万の軍が崩壊したとき、いったい何人が生き残ったのであろうか。
ひとり生き残った老人が、子や孫の魂を慰めに声を上げて泣いていてもよかろうに、それさえないのだ。
年来未休兵、強弱事併吞。
功名竟誰成、殺人遍乾坤。
媿無拯乱術、佇立空傷魂。
年来いまだ兵を休めず、強弱は併吞を事とす。
功名ついに誰か成らん、人を殺すこと乾坤に遍(あま)ねし。
乱を拯うの術無きを媿(は)じ、佇立してむなしく魂を傷ましむ。
その後もいまだ戦乱を止めようとはせず、強いものが弱いものを乗っ取ろうと闘争を続けている。
功績や名誉など一体だれが手にすることがきようか。人を殺して、それが天地の間全体に広がってるのだぞ。
こんな混乱を終わらせるすべをおれは知らない。そのことを申し訳なく思って、たたずんだまま、意味なく心を痛めているばかりだ。
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明・高啓「過奉口戦場」(奉口の戦場を過ぐ)(「高青邱集」所収)。元末の群雄たちの争闘によって荒廃した江南を旅していたときの詩のようです。高青邱は明になってすぐに南京城中にて腰斬(生きながら真っ二つにされる死刑)に処されるので、ここで佇立していたあと、七八年しか生きていないはずです。
この一週間ぐらいで、外交上なんかたいへん困った状態にあることが明らかになった・・・ような気がするんですが、あんまりみんな批判もしてないのは、段々弱って荒廃していく方を取るからいいということなんですかね。ここにわたしの言いたいことも書いてあるみたいなんで、わたしも佇立して魂を傷ましめて、若いひとたちにあとは任せた。すんません、「えへへ」と生きているうちに、こんなにしてしまいました。
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