大驚嘖嘖(大いに驚きて嘖嘖たり)(「明語林」)
けなしあうより褒め合う方がいいようですよ。

お互いに褒め合うとモーターボートのように爽快な気分を味わえるかも。この連載もすばらしい! 理屈ではなくて行政の現場で見つけてきている課題なので、ほんとにすばらしいと思いますよ。ほんとですよ。
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明の萬暦のころ、翰林院にいた孔天胤が杭州の提学(学政の統括官)に赴任してきた。孔はたいへんな自信家で、杭州あたりで自分より詩や文章の巧いやつはいない、と本気で思っていたらしい。
早速、杭州・武林にある南宋の忠臣・岳飛を祀った廟に出かけた。
閲廟壁詩。
廟の壁の詩を閲す。
廟の壁には、この地に来て岳飛の忠義の心に感動したひとたちの詩が多数書きつけてある。孔はそれをちらりと見た。
そして、言った、
何物疥吾壁。
何物ぞ吾が壁に疥せる。
「なんだこれは? わしの(詩を書くべき)壁にたむしがわいておるぞ」
急命隷人篲墨掃之。
急に隷人に命じて墨を篲してこれを掃かしむ。
「篲」(すい)は「竹ぼうき」。ほうきでこすって書きつけて有る文字の墨を消させたのです。
下僕に命じて、大急ぎでほうきで壁の墨をかき消させた。
「早くわしが書けるようにきれいにしろ!」
壁がきれいになっていくのをにやにやして見ていた孔であったが、あるところまで来ると、「ばかもん、それは消すな!」
と突然叫んだ。
その一画に書かれた詩を読んで、
大驚嘖嘖。
大いに驚き嘖嘖(さくさく)たり。
「嘖」(さく)は「叫ぶ」です。「嘖嘖」と続けるとある種の小鳥の鳴き声(ちいちい)、あるいは叫び声(ぎゃあぎゃあ)のオノマトペになります。
たいへん驚き、ぎゃあぎゃあと叫んだ。
それは、虚岩山人・周詩の詩であった。
「こいつは今どこにいるのだ!」
孔は返事も聞かずに、
立命駕往。
立ちどころに駕を命じて往く。
すぐにカゴを用意させて出発した。
詩時敝衣匿蕭寺中。相与定交。
詩、時に敝衣にて蕭寺中に匿る。相ともに定交せり。
周詩はその時、破れた服を着て蕭々寺に隠棲していた。孔はそこに押しかけて、友人となったのである。
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清・呉粛公「明語林」巻六「賞誉篇」より。こういう明代のひとの激しさには辟易することが多いのですが、まあ褒めてくれるならお互い愉快になれるからいいか、という感じです。けなすのはけなす方は楽しいけどけなされる方がつらいです。さらにお互いにけなしあうとどちらも不愉快になってしまいます。
今日はむかしの上司・同僚とイタリア料理を食ってまいりました。どちらかというと褒め合ったので、愉快でした。あ、勘定払ってない、けどまあいいや、今度ちんすこうでも買ってきておみやげにしよう。
なお「明語林」はいろんな本から集めてきたエピソードの縮刷版みたいな本なので、孔天胤が感動した周山人の詩が採録されていないのは残念です。肝冷庵の手抜きではありませんぞ。
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