僮夫匹婦之言(僮夫匹婦の言)(「後漢書」)
「吏」というのは役人だ公務員だ、よし行政改革だ人件費削除だ、とか思ってはいけませんよ。古代チャイナの「吏」は「権力(大企業含む)の側のひと、手先」の意味だと考えてください。

おれはまだあった。かしわもちも。
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後漢の順帝が即位(125年)した直後のことであるが、邵陵令の任嘉なる者が賄賂や横領で随分貯め込み、これが官界のあちこちに出回って、
所牽染将相大臣百有余人。
牽染するところの将・相・大臣百有余人なり。
関係して悪事をしていた将軍や大臣や重臣たちは合わせて百人以上にもなるという大事件になった。
検察はなんとか任嘉だけを処罰して済ませようとしたが、この時、尚書(書経)を学んだ陳留の楊倫という者が皇帝に上書した。曰く、
---わたしはこのように聞いております。
春秋誅悪及本、本誅則悪消。
春秋には、悪を誅するは本に及ぶ、本誅すれば悪消ゆ、と。
春秋の時代には、悪い奴を罰するときにはその根本のところまで及ぼしたものである。根本を罰すれば、悪い奴などいなくなるのだ。
これまでも多くの姦悪な役人を誅殺してきましたが、また任嘉が現れました。ああ、
豺狼之吏至今不絶者、豈非本挙之主不加之罪乎。
豺狼の吏、今に至るも絶えざるは、あに本挙の主のこれに罪を加えざるに非ざるか。
やまいぬやオオカミのような貪悪な役人が、現代に至ってもいなくならないのは、悪の根本に、罪を加えてないからではないでしょうか。
むかし斉の威王が覇者となった時、国民を苦しめていた姦悪な臣下を五人誅殺したのでございますが、あわせてこの五人を推薦した者をも誅殺したのでありました。
当断不断、反受其乱。
断ずべくして断ぜざれば、反ってその乱を受く。
断ち切ってしまわねばならないのに断ち切らないでいると、今度はそれがこちらに跳ね返ってくるものだ。
とは、黄石公が述べた(という伝説の)「三略」に言うところでございます。
今、わたしは無位無官でございますが、
夫聖王所以聴僮夫匹婦之言者、猶塵如嵩泰、霧集淮海、雖未有益、不為損也。
それ、聖王の僮夫・匹婦の言に聴く所以は、なお塵の嵩・泰に如(ゆ)き、霧の淮・海に集まるがごとく、いまだ有益ならずといえども、損うとは為さざるなり。
さてさて、古代の聖なる王たちが、下僕の男や同じような身分の女などのコトバにも耳を傾けた理由は、嵩山・泰山のような高い山にチリを乗せたり、淮水やその向こうの東シナ海に霧を加えたりするようなもので、何の役にも立たないことばかりなのですが、しかし損にはならないからであります。(損にならない上に、そこに真実があって、役に立つこともあるかも知れないのです。)
塵や霧みたいなものだと思えば世論調査も役に立つのかも?
惟陛下留神省察。
これ、陛下、神を留めて省察せよ。
陛下、どうぞこのことに精神を留めてよくよくお考えくだされ。
この上奏書を事前チェックした担当部局は、
以倫言切直、辞不遜順、下之。
倫の言の切直にして辞の遜順ならざるを以て、これを下す。
楊倫の文章が切迫して正直に過ぎ、(皇帝に差し上げる文書としては)コトバに謙遜や従順さが見られない、として採用しなかった。
さらに、検察担当では、
奏倫探知密事、激以求直。坐不敬、結鬼薪。
倫の密事を探知し、激して以て直を求むるを奏す。不敬に坐し、鬼薪に結せり。
楊倫が政府内の秘密のことを探って知り、それで興奮して正義を求めているのではないかと上奏した。
結局、(秘密を探っているという疑いは証明されず)不敬罪だけが成立して、「鬼薪」の刑罰に処することとなった。
「鬼薪」(きしん)というのは帝室の宗廟(おたまや)で薪を運んだりする肉体労働に従わせる刑罰です。
この刑罰の上奏があって、帝ははじめて楊倫の上書があったことを知り、
特原之、免帰田里。
特にこれを原(たず)ね、免じて田里に帰らしむ。
特別にもう一度罪を洗い出し、刑罰を免除して郷里に帰らせたのである。
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「後漢書」巻七九上「儒林列伝」上より。あははは、ほんとにダメだなあ、むかしの人たちは。その点現代は進んでいるから、悪いやつらの情報なんてSNSですぐみんなに知れわたるから安心だなあ。・・・もちろん皮肉ですよ。
今日もエンゲル係数を上げにスーパーに寄ったら、ほんとに一部ネットで予測されていたとおり、連休明けの品薄・欠品が始まっていました。なるほどなあ、包装材料から尽きてくるんだ。やっぱり分かった人たちがいるもんだなあ、と感心します。予測どおりだと来年にかけて食糧危機がはじまることになります。大変だなあ。
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