報之独厚(これに報ずること独り厚し)(「双槐歳鈔」)
あんまり暑いと噴水やプールはもちろん、井戸にも頭から突っ込みたくなるものですが、最近井戸見なくなったなあ。

今日は世界ネコの日にゃんぞ。日本のネコで世界に通用するのはおれぐらいにゃんぞ。それにしても眠いでにゃん。
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明の半ばごろのことですが、平南の張輝は廣東の地方試験で首席(解元)を取った男で、
自負文学、為人甚温雅疏俊、士子愛之。
文学に自負し、人となり甚だ温雅にして疏俊、士子これを愛す。
文章の学問には自信があり、たいへん穏やかで雅やか、大まかで鋭い、という性格であったから、地域の有力者やその子弟からたいへん敬愛された。
景泰元年(1450)、洛陽に近い香山の学校の教諭として赴任してきた。
忽見廨舎井中、有人衣紅出而招之。
忽ち廨舎の井中に、人の衣紅なる有りて、出でてこれを招くを見たり。
突然、「官舎の庭の井戸の中に、赤い服を着た人がおり、そいつが出てきて手招きしておるのが見える」と言い出した。
張輝は
素有胆気、呵罵之。
もとより胆気有れば、これを呵罵す。
以前から度胸のあるおとこであったから、そのひとを叱り、怒鳴りつけた。
するとその人は井戸桁に昇って、消えてしまった。
さて次の日、
会飲県堂、与丞争坐位、交相拳殴。帰、投井死。
県堂に会飲して、丞と坐位を争い、交(こもごも)相拳殴す。帰りて、井に投じて死せり。
県の広間で宴会があり、そこで次長とどちらが上席かを争って、とうとう互いにこぶしで殴り合いになってしまった。そこから帰ってくると、そのまま井戸に身を投げて死んでしまった。
暑くて飛び込んでしまったのかも知れません。
県の長官が報せを聞いてやってきた。
収斂輝畢、遂塡其井。
輝を収斂し畢(おわ)り、遂にその井を塡(うづ)む。
張輝の死体を取り上げ終わると、(不吉であるとして)その井戸を埋めてしまった。
こんなことがあったのでは、張輝はなにか呪われているのではないか、と思うであろう。ところが、
其子孫至今貴顕。
其の子孫、今に至るも貴顕なり。
その子孫は、一世紀以上経った現代でも、身分も高いし富をある。
豈輝学行、夭于非命、天故報之独厚歟。
あに、輝の学行にて非命に夭すれば、天故にこれに報ずるに独り厚くせるか。
張輝先生ほどの学問があり、行動も評価されたひとが、悲劇的な形で若死にせねばならなかったのである。そのため、天も彼の子孫にだけは、厚く報いざるを得ないのではなかろうか。
暑かったのがいけないのだと思います。
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明・黄瑜「双槐歳鈔」巻六より。井戸が見つからないのなら、ポストにでも頭突っ込んで涼しくするか。だが、ポストもこれからは減るかも知れないということである。
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