醒酔相笑(醒めたると酔いたると相笑う)(「陶淵明集」)
日曜の夜、今日は「ひひひ、野暮用で遅くなったぜ」「へへへ、もうサボってしまえ」と一人で笑いながらもう寝ようと思ったのですが、心の中の第三者が「けけけ、ノルマ果たさずに寝ると夢見悪いぜ。どうせ何の価値も無いんだけどな」と言い出すので、「な、なんだと」「おまえに何がわかる」と反発してみますが、「けけけ、その何の価値も無いノルマを果たす、以外に今のお前は生きる意義を持っているのかい?」と言われるとそのとおりですね。ふむふむ。別に明日会社に行かなくても誰も困らないのでノルマを果たしますぞ。

この三人上戸、感じ出てていいですね。でも一人も醒めてるやつはいないのか。
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六朝の時代のことですが、
有客常同止。取舎邈異境。
客有り、常に同止す。取と舎は邈(はる)かに境を異にす。
あるところに二人のひとがおりました。この二人、行くも止まるもいつも一緒だ。
しかし、人として採用している生き方・採用していない生き方は、二人の間ではるかに違っていた。
一士常独酔、一夫終年醒。
一士は常に独り酔い、一夫は終年醒めたり。
一人の方はいつもお酒にひとりで酔っており、
もう一人は一年中、しらふでいたのじゃ。
醒酔還相笑、発言各不領。
醒めたると酔いたるとまた相笑い、言を発するもおのおの領せず。
しらふのやつと酔っぱらったやつは、どちらもお互いに相手を嘲笑し、
「おまえのここがダメなのだ」と発言するのだが、どちらも了解しない。
まあ、でも、横で見ていますと、
規規一何愚、兀敖差若穎。
規規(きき)たるは一に何ぞ愚かなる、兀敖(ごつごう)たるは差(や)や穎(まさ)れるがごとし。
マジメにやっている方は本当になんと愚かなのであろうか。
ぐたーとして威張っている方は(マジメにやっていないだけ)少しだけ勝っているように思う。
わたしが思っているだけですけどね。
というわけで、
寄言酣中客、日没燭当秉。
言を寄せん、酣中の客、日没すれば燭まさに秉(と)るべし。
言わせていただきたい、ほろ酔い気分のみなさまよ、
日が暮れたら、さあ、燭台に火を灯して、お酒を飲まねばなりません。
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晋・陶淵明「飲酒」十三。詩意は明らかでまあいいんです。しかし、この「醒めているひと」と「酔っぱらっているひと」と「横で見ているひと」は同じ「陶淵明」です。「ひひひ、おまえはダメだな」「へへへ、酒代もったいない」「けけけ、こいつらバカ」と一人で笑っているとすると、相当ヤバイ感じがします。だれにも見られていないならいいのだが。
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