9月19日 いなか者にやられるとは

京師騙術(京師の騙術)(「鸝砭軒質言」)

気をつけねばなりませんぞ。

土星ぐらいの田舎でのんびり暮らしタイタン。

・・・・・・・・・・・・・・

清のころのことです。河北・通州の孝廉(挙人。科挙地方試験の合格者)の某は、北京の市場に出かけた。

冀便宜得物、見羊皮袍、面湖縐、似新製成者、値四両、遂買帰。

とりあえず、四千円ぐらいでしょうか。

大威張りで通州のひとびとに見せたところ、ひとびとは言った、

君勿喜、京師騙術幻甚。安知非偽者乎。

「むむ?」

某がよくよく見ると、

果以皮紙作質而粘毛於上者。

ニセモノだったのだ。(ふつうのヒツジ皮より手がかかってそうですが。)

恨甚。既而笑曰、鼠輩詐予、予不能詐鼠輩哉。

復入市転售於人、得六金。

六千円ぐらいになったようです。

帰而大笑曰、田舎奴、我豈妄哉。

ひとびとは言った、

君勿喜、京師騙術、幻之又幻。

何至是也。

出銀、一鉛錠而己。

此見京師騙子之奇矣。

・・・・・・・・・・・・・・・・

清・戴蓮芬「鸝砭軒質言」巻四より。ほんと、都はぺてん師だらけですから、気をつけてないといけませんね。え? ナニワよりはマシ? ほんまかいな。

ちなみに、「鸝砭軒」(りへんけん)というのが著者の戴蓮芬の軒名(わたしが「肝冷斎」みたいな、近所の中華料理屋が「来々軒」みたいな「屋号」です)ですが、「鸝」はウグイスのような黄色まじりの鳥、その鳥の「砭」(へん。いしばり。鍼灸の「鍼」)という二文字の意味はよくわかりません。書名は「鸝砭軒」の著した「質言」(正直な、ウソの無い言葉)です。戴蓮芬は、清末の河北・通州の人、「都に五回行った」と自分で言ってるほどの人ですが、どれぐらい正直者であったかはわかりません。みなさんぐらいかな。

ホームへ
日録目次へ