初熟摘小(初熟に小を摘む)(「益知録」)
今日はまだナスの季節ではない。

おいらたちは秋が旬。
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明の初めごろのことだそうですが、県令の李亨のもとに、
窃茄相訴。
茄を窃すると相訴するあり。
ナスを盗まれた、盗んでない、という争いが持ち込まれてきた。
李亨が訴えを聴くに、
甲:業圃、茄初熟、乙窃而鬻于市。乙:鬻初熟茄于市、甲追奪之。
甲:圃を業とし、茄初めて熟するに、乙窃(ぬす)みて市に鬻(ひさ)ぐ。
乙:初熟の茄を市に鬻ぐに、甲これを追奪す。
甲の言い分「畑農家です。ナスがやっと実ったところ、乙の野郎が盗んで市場で売ってました」
乙の言い分「やっと実ったナスを市場で売っていたら、甲が突然やってきて「取り返す」と言い出したのです」
「なるほどなあ。ナスを持って来てくれ」
令命傾其茄于庭而笑。
令命じてその茄を庭に傾けて、笑えり。
県令の李亨は、争いになっているナスを持って来させて、裁きの庭に広げさせ、それを見て突然笑い出した。
何がおかしいのでしょうか。
笑い終えると李亨は、乙の方に向かって、
爾真盗矣。
爾、真盗なり。
「おまえの方が盗人だな」
と言ったのである。
「ええー?」
果為爾茄、肯于初熟時并摘其小者。
果たして爾の茄なれば、あえて初熟時に并(あわ)せてその小なるものを摘まんや。
「もし本当におまえのナスだったら、やっと実ったばかりの時に、小さい実まで一緒に摘んでくるはずがないではないか」
「ふぎゃー! ご明察にござりまする」
乙即伏罪。
乙、即ち伏罪せり。
乙はすぐに罪に伏した。
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明・孫能伝「益知編」より。こんな本を読んでいればどんどん知恵が益しそうですね。
自分のものなら小さいうちに摘むことはない。自分のものではないから、ぎりぎりで生活している人の収入や知恵や人材や中小企業などの「金のなる木」もどんどん税金で刈り取っていくんだ・・・としたら、納得です。