源清流潔(源清ければ流れ潔し)(「清通鑑」)
雑草や落ち葉を見とがめられないようにするには、除草剤のきっついやつで樹木自体を消滅させてしまえばいいんだ!もとがきれいさっぱりすれば、流れも清らかになる。しかも、それを現場の判断にしておけば、一石多鳥だ。

透明度世界一!ようし、今年は北海道行くぞ! でも世の中がこんなに澄んでいたら生きていくのツラそうです。
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清・康煕二十四年(1685)二月、新たに漕運総督に任命された徐旭齢が赴任の挨拶に参上した。
帝はおっしゃった。
源清則流潔。爾為大吏、務潔己率属、官吏自不為奸。
源清ければ流れ潔し。爾、大吏たり、己を潔くして属を率うるに務むれば、官吏おのずから奸を為さず。
「泉源が清ければ、流れはすべてきれいになる(、というコトバを送ろう)。あなたは大きな権限を持つ高官になった。あなた自身を潔癖にして、部下を率いてください。そうすれば、あなたの部下の政府が任命する官も下っ端で現地で働いている吏も、おのずと悪賢いことはしないでしょう」
「はは!」
初老の徐旭齢は、いささか緊張しながら、
・現在、大運河による船舶運送の規則が時代に適合しないこと
・例えば、淮水を通過するときに貨物の検査があり、この際に納付する手数料が恣意的で運送者が困っていること
・その埋め合わせに、政府米を横流しした例があること
・自分が任務に就いた後は、徹底的に綱紀を粛正して、運送する人民や補給を受ける側の軍人の窮乏を防ぐこと
・従来、公文を満洲文字と漢字二通作っていたのを、漢文一通にして関係する職員を削減すること
官省則弊亦省、似于地方有益。
官省かるれば弊また省かれ、地方に益有るに似たり。
役人の仕事が減れば弊害もまた減り、地元にはいいことがある、ように思われまする。
―――といったことを奏答した。
青年皇帝は大らかに微笑まれ、
此等応行事宜、爾到任後即具本来奏、朕自允行。
これら、まさに事の宜しきを行うべく、なんじ任に到るの後は即ち具本の来奏、朕自ら允行せん。
「そういったことは、どうぞ一番よいようにしてください。あなたが着任した以降は、あなたからの報告や上奏は、すべてわたし自身が確認して実施に回すことにします。
凡河工有関漕務者、爾便宜行事、不必推諉。其属官賢否、宜従容細訪、廉察得真、方可入告。挙一人務使千万人知勧、劾一人務使千万人知懲。
およそ、河工の漕務に関わり有るものは、爾便宜に行事して、必ずしも推諉せざれ。その属官の賢否はよろしく従容し細訪、廉察して真を得て、まさに入告すべし。一人を挙ぐるには務めて千万人に勧むるを知らしめ、一人を劾するには務めて千万人に懲らさるを知らしめよ。
河川工事の関係でも、船舶運送に関わることであれば、あなたが一番よいように行ってください。他の官庁に決裁を回す必要はありません。ただし、あなたの部下については、できる・できないをあちらこちらから細かく公平に観察して、真実を確認してから、評価を報告してください。一人のひとを出世させるときは、できるだけ多数のひとに、出世できるのは何故かを知らしめ、彼らが真似できるようにし、一人のひとを降格するときは、できるだけ多数のひとに、降格されるのは何故かを知らしめ、彼らが真似しないようにしてやる必要があります。
それから、もう一つ。
待属員、不可刻。伊等各有難処、爾若平心待之、則下吏皆悦服矣。
属員を待つに刻なるべからず。伊(かれ)らおのおの難処有るべきも、爾もし平心にこれを待てば、すなわち下吏みな悦服せん。
部下に対するときは、厳しすぎてはいけません。彼らにはみなそれぞれ、ダメなところがあることでしょう。しかし、あなたが公平で落ち着いたキモチで彼らに対応したなら、(直接の部下だけでなく、様子見をしている)下っ端の地元の世襲のやつらも、喜んで仕事をしてくれるようになるでしょう」
「ははー」
これができないやつが多いんだよなー。過失で怒るのならまだしも、義務感で怒ったり楽しくて怒るやつもいる始末なのじゃよ、と康熙帝の嘆きが聞こえてきそうでございます。
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「清通鑑」巻42より。チャイナでは皇帝はみんな(在位中は)名君という扱いになり、ひどい人の方がもちろん多いですが、ほんとの名君も時々います。漢の文帝、後漢の光武帝、梁の武帝(前半)、唐の太宗、宋の仁宗、孝宗、明の弘治帝、清の雍正、乾隆・・・その中でもどう考えてもこの人が一番の名君でありましょう。徐旭齢のような高級官僚は有能ならこきつかわれ、無能なら退隠せしめられ、蓄財しようとしたら見つかって叱られるなど大変かも知れませんが、おれたち人民は楽ちんだし税金安いしあのころは最高でしたなあ。