法人之学(法人の学)(「仁学」)
今日は清末・変法運動に参加し、百日新政の崩壊後に康有為や梁啓超は亡命しましたが、ひとり清に残って死刑になった名高い革命家・譚嗣同の文章です。明治の日本言文一致体の影響も受けているので、いつもご紹介している「とろーん」とした漢文とは雰囲気違います。

海の日は、うみぼーずに底抜けひしゃくをあげよう!底ありひしゃくだと民間の儲けが全部掬い上げられてしまう、けど知らんけど。
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法人之改民主也、其言曰、誓殺尽天下君主、使流血満地球、以洩万民之恨。
法人の民主に改むるや、その言に曰く、「誓いて天下の君主を殺し尽くし、流血を地球に満たさしめて、以て万民の恨みを洩らさん」と。
この「法人」は「フランス人」のことですよ。
フランス人が民主革命を起こした時、彼らは言った、「世界中の君主を殺し尽くすことを約束しよう。彼らの血を地球中に満たして、世界の人民たちの恨みを晴らそうではないか」と。
朝鮮人亦有言曰、地球上不論何国、但読宋明腐儒之書、而自命為礼義之邦者、即是人間地獄。
朝鮮人、また言有りて曰く、「地球上の何れの国を論ぜず、ただ宋明の腐儒の書を読みて、自ら命じて「礼義の邦」と為す者は、即ちこれ人閒(じんかん)の地獄なり」と。
李朝の(革命派の)人は言う、「地球上のどこの国でもいいが、宋や明の(朱子や王陽明みたいな)どぐされ儒者どもの本ばかり読んで、自分たちの国は「礼と義の国」だと思い込んでいる(わが国の)ような国は、そのまま人間世界の地獄である」と。
このコトバを聞いて、みなさんはどう思うか。
法人之学問、冠絶地球、故能唱民主之義、未為奇也。朝鮮乃地球上最愚闇之国、而亦為是言、豈非君主之禍、至於無可復加、非生人所能任受耶。
法人の学問は地球に冠絶す、故によく民主の義を唱うもいまだ奇と為さず。朝鮮すなわち地球上最も愚闇の国、しかるにまたこの言を為す、あに君主の禍のまた加うるべき無きに至り、生人のよく任受するところにあらざるに至れるにあらざらんや。
フランス人の学問は地球で最高ですから、民主の正義を唱えるのも、当然変なことではありません。一方、朝鮮は地球上最もオロカで暗闇の国です。それなのにこのような(民主的な)発言が為されているとは。
これは、君主制度の禍がもうこれ以上ないところまで行きつき、生きている人間には受け入れられないほどになっているからではないでしょうか。
「最も愚闇の国」とは、無茶苦茶言ってますね。さらにSDGsやLGBTqの悪口まで言い出すのではないかと心配になります。
しかし、
其禍為前朝所有之禍、則前代之人既已順受。
その禍は前朝の有するところの禍たり、則ち前代のひと既已(すで)に順受せり。
この(君主の)禍はこれまでの王朝が持っていた禍であり、これまでの時代の人々がすでにその禍を受けているのである。
今之人或可不較。無如外患深矣。
今の人、あるいは較べて、外患の深きには如く無しとせざるべけんや。
現代の我々は、(君主の禍は)比較してみて、外国の禍ほどではないと思わないことがあるであろうか。
つまり、外患の方がひどいのです。
海軍潜矣、要害扼矣、堂奥入矣、利権奪矣、財源竭矣、分割兆矣、民倒懸矣、国与教与種将偕亡矣。
海軍は潜せられ、要害は扼せられ、堂奥入られ、利権奪われ、財源竭き、分割兆し、民倒懸され、国と教と種、まさにともに亡ばんとす。
海軍は沈められた(日清戦争など)。各地の要害は租借された。内陸の奥深くまで入り込まれた。鉄道など利権は奪われた(というか差し出してしまった)。(関税収入を担保にしているので)財源は枯渇した。国は分割されそうだ。国民はさかさまにされたように苦しんでいる。国と、文化と、民族は、ともに滅亡しようとしている・・・!
たいへんなんです。
唯変法可以救之、而卒堅持不変。
ただ変法以てこれを救うべく、而ればついに堅持して変わらず。
ただ変法運動だけがこれを救うことができるのだ。だから、これを堅持して態度を変えることはありえない。
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清・譚嗣同「仁学」三十四章より。まだ続きますが、きつい文章ですね。まさに非常の人が非常の思いで書いていることが知れます。
譚嗣同が苦悩を表明しているのは十九世紀末の光緒年間のことでしたが、現在の我が国も、よく説明されてはいないのですが危機なので、増税です。
ただ増税以てこれを掬うべく、而ればついに堅持して変わらず。
ただ増税運動だけがこれを掬うことができるのだ。だから、これを堅持して態度を変えることはありえない。
インボイス、ステルス増税など、なんとなくですが国の基礎が崩壊しそうな気もして、うーん、導入の仕組みをもう少し工夫しないといけないような気が素人考え的にはする・・・のですが、もう決まっているらしいのでしようがないんです。