生事何寠(生事、何ぞ寠せる)(「明語林」)
体重が止まらない。

ぶくぶく・・・。と肥ります。
・・・・・・・・・・・・・・・
元末明初の学者・趙弼は太僕の官を辞めて郷里に帰った。
与農夫耦耕、盤跚泥沢中、晏然自足。
農夫と耦耕し、泥沢中に盤跚して、晏然として自足す。
百姓と並んで耕し、ドロドロの中でふらふらしながら、安らかに自ら足れりとしていた。
ある日、
分巡姚祥至其廬。
分巡・姚祥その廬に至る。
かつての同僚である巡回監督官の姚祥が、趙弼のあばら屋を訪問した。
弼時耘田、遂棄鋤、于田畔見之。
弼、時に田に耘(くさぎ)り、遂に鋤を棄てて、田畔においてこれに見(まみ)ゆ。
趙弼はちょうどその時、田んぼに出かけて草取りをしていた。姚祥が来てくれたので、最終的にはスキを手放し、田んぼのあぜ道で会見したのであった。
趙弼の
詞色自如。
詞色自如たり。
ことばづかいも顔色も満足そうである。
姚祥は訊いた。
生事何寠。
生事、何ぞ寠せる。
「それにしても、生活はずいぶんお困りになっているようじゃな」
趙弼は破顔一笑して答えた、
差勝秀才時。
差(やや)秀才時に勝れり。
「受験勉強時代に比べれば、少し暮らし向きはいいのう」
そのころこんな暮らしができていたなら、誰が宮仕えなんかしたものか。
・・・・・・・・・・・・・・・・
清・呉粛公「明語林」巻七「棲逸篇」より。都会を離れた同じような境遇なのに、寠(やつ)れずに肥ってくるんです。