大儒俗儒(大儒あり、俗儒あり)(「荀子」)
こんなに区分しなくてもいいのに。

着ているものや髪の形で決めつけないでほしいぜ。
・・・・・・・・・・・・・・・
紀元前、戦国の時代のことですよ。現代のみなさんのことを言っているのではないのですよ。
不学問、無正義、以富利為隆。
学問をせず、正義無く、富利を以て隆(さかん)なりと為す。
学問をしない、正しいことは何か考えない、財産と利益がたくさんある、ということが栄光だと考える。
是俗人者也。
これ、俗人なる者なり。
これが、俗なる一般人というものだ。
次に、
逢衣浅帯、解果其冠、略法先王而足乱世。呼先王以欺愚者、而求衣食焉。
逢衣に浅帯、その冠を解果にし、ほぼ先王に法りて世を乱るに足る。先王を呼して愚者を欺き、而して衣食を求むるなり。
「解果」は諸説あるのですが、「蟹螺」(かいら)で、背の高い貝殻を持ったカイのこと、したがって「高い冠」のことだ・・・という説を取ります。
縫われた大きな服を着て、薄い帯を締め、やたら高い冠をかぶり、いつも「むかしの王さまは・・・」はばかりいって、世の中をおかしくしてしまう。「むかしの王さま」の先例が素晴らしかったと言い立てて、オロカな者たちを欺いて、着るもの食べるものを得ようとする。
随其長子、事其便辟、挙其上客、而不敢有他志。
その長子に随い、その便辟(べんぺき)に事(つか)え、その上客を挙す、しかるにあえて他志有るにはあらず。
君主の後継者に随行し、君主のお気に入りたちのために仕事をし、君主の尊敬する顧問たちの意見に賛同する―――(怪しからんが)決してそれ以上の悪意があるわけではないのだ。
是俗儒者也。
これ、俗儒なるものなり。
これが、俗なる儒者(知識人)というものだ。
衰退国家にはこれぐらいの人材でも十分だ・・・と思うのですが、さらに、
法後王、一制度、隆礼義而殺詩書。
後王に法り、制度を一にし、礼義を隆(さか)んにして詩書を殺(さい)す。
現実の王者たちの政治を分析し、分化した制度を統一し、現実に働いている社会的な規制力である「礼」と社会が共有する正統性を強化し、伝統的な文化である「詩経」や「書経」の研究を制限しようとする。
いわゆる「後王主義」です。古代の「先王」とその制度より、現代の「後王」とその制度を尊重し、過去の伝統ではなく、現実に働いている社会の諸事象を考察すべきだ、と考えます。
知之曰知之、不知曰不知、内不自以誣、外不自以欺、以是尊賢畏法、而不敢怠傲。
これを知るをこれを知ると曰い、知らざるを知らずと曰い、内には自ら以て誣せず、外には自ら以て欺かず、これを以て賢を尊び法を畏れ、あえて怠慢せず。
知っていることだけを知っているといい、知らないことは知らないと明確に言う。内面的には自分をごまかさず、対外的にはこちらから相手をだますことはない。こうして、賢者を尊敬し、きまりを守り、怠ったり慢心したりしない。
是雅儒者也。
これ、雅儒なるものなり。
これが、洗練された儒者(知識人)というものだ。
すばらしい。これ以上の人は・・・と思うのですが、さらに、
法先王、統礼義、一制度、以浅持博、以古持今、以一持萬。
先王に法り、礼義を統べ、制度を一にし、浅を以て博を持し、古を以て今を持し、一を以て萬を持す。
昔の王さまの制度を規範にし、現実に働く社会的規制や正義の概念を統合し、制度を統一し、浅薄な情報量でも博い知識を集め、むかしの規範で現代を規制し、少数(一)によって多数(万)を平穏に保つ。
苟仁義之類也、雖在鳥獣之中、若別白黒。
いやしくも仁義の類なるや、鳥獣の中に在るとも、白黒を別くるがごとし。
人間的な感情や正義への欲求の方向が同じだと思うと、トリやケモノであっても、白と黒を見分けるようにたやすく見分けることができる。
奇物怪変、所未嘗聞也、所未嘗見也。
奇物怪変は、いまだかつて聞かざるところにして、いまだかつて見ざるところなり。
珍しいモノ、怪しい変事にも、聞いたことがない、見たことがないように対応して惑わされない
是大儒者也。
これ、大儒なるものなり。
これが、偉大なる儒者(知識人)というものじゃ。
すばらしい。これ以上の人材なんて、欧米留学組ぐらいしかいないでしょう。
人主用俗人則万乗之国亡。用俗儒則万乗之国存。用雅儒則千乗之国安。用大儒則百里之地久、而後三年天下為一。
人主俗人を用いれば、万乗の国といえども亡ぶ。俗儒を用いれば、万乗の国存す。雅儒を用いれば千乗の国も安く、雅儒を用うれば百里の地も久しく、然る後三年にして天下を一と為(せ)ん。
主権者が俗なる一般人を雇用するなら、一万台戦車の出せる国(もはや統一された天下だ)であっても滅亡するであろう。俗なる学士を雇用するなら、一万台の出せる国はなんとか保てる。雅なる学士を雇用すれば、千台の馬車を出すレベルの諸侯国がなんとか保存される。大いなる学士を雇用すれば、百里四方(一里は600メートルぐらい)の地域を永遠に支配することができて、しかも三年もすれば、その地域から天下を治めるこことになるだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「荀子」儒効篇第八より。今日も暑かったですね。体温以上だ、というのだから、体温をあげればいいのでは? よし、感染して発熱すれば楽に・・・ならないと思うので気をつけよう。
それにしても、俗人を雇うと国が亡びるなどとフリークだ。傷ついた。ジェンダーだ、LGBTだ、SDGsだ、ルッキズムだ、ひどい。とこれぐらい言っておけば一つぐらい当たるかも。
・・・と、自己弁護ばかりしていてはいけません。むかしの人のコトバにも少しは学ぶべきこともあるのでは。うっかり聞いてたら、ダメ、ダメ、ダーメダメ!