在世十恨(世に在れば十の恨みあり)(「幽夢影」)
食い物は一つだけ、とは・・・。

我に恨み無し!
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この世に十個の恨みごとがある。
一恨:書嚢易蛀。
一の恨み、書嚢の蛀(しゅ)し易し。
1 書物を入れた箱や袋は、虫が食いやすい。
二恨:夏夜有蚊。
二の恨み、夏夜に蚊有り。
2 (外の風が気持ちいい)夏には蚊が多い。
三恨:月台易漏。
三の恨み、月台漏し易し。
「漏」(ろう)は「水時計」、「その指し示す時刻」のことです。時刻が進んで時の鐘や太鼓が鳴ります。
3 月見の高台では時間が速く進む(ように感じる)。
四恨:菊葉多焦。
四の恨み、菊の葉に焦多し。
「焦」は「お焦げ」のことですが、ここではお焦げのような「黒い斑点」。
4 菊の葉には黒い斑点ができやすい。
五恨:松多大蟻。
五の恨み、松に大蟻多し。
5 松の根元や幹回りにはよくでかいアリがいる。
山中なので山アリがいるんでしょう。
六恨:竹多落葉。
六の恨み、竹に落葉多し。
6 竹は葉がよく落ちる。
疲れてきました。あと四つか。がんばろう。
七恨:桂荷易謝。
七の恨み、桂・荷謝し易し。
7 桂の花やハスの花は、凋み落ちるのが速い。
八恨:薜蘿蔵虺。
八の恨み、薜蘿(へいら)は虺(き)を蔵す。
「薜」も「蘿」も蔓草です。
8 蔓草のはびこった塀や垣は(風情があるが)、ヘビがよく出る。
九恨:架花生刺。
九の恨み、架花に刺を生ず。
9 花棚に大事に育てた(薔薇の)花に、トゲがある。
十恨:河豚多毒。
十の恨み、河豚に毒多し。
10 フグは美味いけど毒がコワい。
やっと食い物だ。しかしフグはあまり食べないので恨みも何も無い。
評者が来て書きつけていきます。
江的庵:黄山松併無大蟻、可以不恨。
黄山の松は併せて大蟻無し、以て恨みざるべし。
安徽の名勝、聖地・黄山の松は(一段とすばらしく)、おまけに大きなアリがいない。恨むことはできませんね。
張竹坡:安得諸恨物尽有黄山乎。
いずくんぞ諸ろの恨物をしてことごとく黄山に有らしむを得んや。
どうやったら、このいろんな恨みたいことを、黄山に出現させることができるのかね(。できないぐらいすばらしいところだ。一度行ってこい)。
ハワイみたいなところなんでしょうか。
石天外:予別有二恨、一曰才人無行、二曰佳人薄命。
予には別に二恨有り、一に曰く才子に行無し、二に曰く佳人薄命。
わたしはあと二つ、この世には恨みごとがあります。
11 才能のあるやつは生活態度が非常識。
12 美しい人に短い命。
如何ですか。
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清・張潮「幽夢影」第27則。もっとありますよね、みなさんは。書き出してみれば楽になるかも。今日は頭痛が治癒。