4月26日 明日できることを今日するな

次早視之(次早これを視る)(「述異記」)

今日は案外多忙でいろいろし残した。今日中にやらないといけないこともあったような気がしますが、明日になってから考えましょう。

ヒツジ類は早く寝ないと死んでしまうかも知れないでめー。

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清のはじめころ、海塩出身の兪漢乗という人はいろんなことを研究する、今でいう博物学者であった。役所の仕事で江西の湖口の町に赴任したが、

邑多虎患。

邑に虎患多し。

この町の周辺はトラの害が多いところであった。

兪漢乗はトラの行動を調べあげて、雄が何頭、雌が何頭、子どもが何頭であるか、それぞれの性格、家族関係などを分析し、人民とトラとの遭遇を減らしてその害を防いだので、感謝されていた。

1 町の郊外に住む貢生(寄付によって官職を買った人)から情報がありました。

その家で、

夜忽聞一物墜其屋上、梁瓦倶裂。

夜たちまち、一物のその屋上に墜ち、梁瓦ともに裂くるを聞く。

夜中に突然何かがその家の屋上に落ちてきて、屋根瓦が割れ、屋根裏の梁が折れる音がした。

「たいへんだわよ」

「むにゃむにゃ・・・まあいいや、明日調べよう」

次早視之、見異獣墜両櫃間而死。

次早これを視るに、異獣の両櫃の間に墜ちて死するを見たり。

次の日の朝そこを調べてみたところ、おかしなケモノが二つの物入れ箱の間に落ちて死んでいるのが見つかった。

兪漢乗は呼ばれてその姿をスケッチすることができたが、

羊頭羊蹄、牛身馬尾、不知何怪。

羊の頭、羊の蹄、牛の身、馬の尾、何の怪なるかを知らず。

あたまと足の先はヒツジ、体形はウシ、しっぽだけウマ、という姿。いったいどういうドウブツなのか、皆目わからなかった。

康煕丁巳年(1677)のことであった。

ほぼヒツジの類ではないかと思われますが、何故空から落ちてきたのだろうか。

2 湖で漁撈している漁師から情報がありました。

獲一魚、重斤許。魚頭鼠身。

一魚、重さ斤許(ばか)りなるを獲。魚頭にて鼠の身なり。

重さ一斤(600グラム)ぐらいの魚を漁獲した。頭は魚だが、体はネズミである。

これも子細に観察することができましたが、おそらく

鼠入水所化。

鼠の水に入りて化するところならん。

ネズミが水中に入って魚に変化する途中を捕えてしまったものであろう。

これも康煕丁巳年のこと。もしかしたら逆に魚がネズミになって地上に昇ろうとしていた途中だったのカモ。

3 康煕乙亥(1695)、引退して郷里に帰ってきていた兪漢乗のもとに情報が入りました。

「先生、へんなものがあがりやした。まだ生きてます」

早速、海辺に行ってみると、

海浜獲一物、如人。頭面五官四肢全具、女形、両乳無別、腹白如魚、背青有鬣、無髪。長五六尺。

海浜に一物、人の如きを獲たり。頭面・五官・四肢すべて具わり、女形にして、両乳別する無く、腹白く魚の如く、背に鬣有りて髪無し。長さ五六尺。

海べの浜に打ち上げられていたのは、人間のようなモノ、であった。頭と顔、目鼻耳口、手足、すべて具わっている。女性形を取っているらしいが、両の乳房は分かれていない。腹側は白くて魚のようであり、背中側は青く、背ビレがあり、頭髪は無かった。体長は1.5~2メートル近くある。

「これは珍しい」

両年前海塩獲一物、形正同、僅長尺余。

両年前、海塩に一物を獲たるに、形まさしく同じく、僅かに長さは尺余なり。

二三年前、この海塩の地でやはり一体のモノを捕えたが、体形はまったく同じであった。ただ、体長は30センチ余りしかなかった。

「これはでかい上にまだ生きているからな」

漁師に命じて食べ物を与えさせ、観察させたが、

一二日斃。

一二日にして斃る。

一二日ほどで死んだ。

兪漢乗によれば、

蓋人魚也。

けだし、人魚ならん。

これは「人魚」だろう。

「史記」秦始皇帝本紀に、天下の七十万余の人を徴発して驪山の麓に始皇帝の墓を造り、地下世界に

以水銀為百川江河大海、機相灌輸。上具天文、下具地理、以人魚膏為燭、度不滅者久之。

水銀を以て百川・江河・大海と為し、機して相灌輸せしむ。上には天文を具え、下には地理を具え、人魚の膏を以て燭と為し、不滅のものをしてこれを久しくせんと度(はか)れり。

常温で液体化している水銀を湛えて、もろもろの川、長江と黄河、大いなる東の海とし、機械を使って還流させた。天井には日月や星座を形づくり、地面には山や谷を形づくって、人魚を搾った脂膏を灯火にして、消えない火を永遠に燃やし続けておこうと設計した。

と云う。

豈是物歟。

あにこの物ならんか。

どうしてその人魚がこれで無いことがあろうか。

必ずこれである。

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清・東軒主人「述異記」巻中より。屋根に穴あいても「明日でいいや」というのどかな心が豊かな生活を生みだすのでしょう。学びたいものです。

いいもの食わせないと人魚は一二日で死ぬかも知れないのよ。高級すし食べたいわね。

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