齅著脳裂(齅著(きゅうぢゃく)すれば脳裂せん)(「趙州録」)
眠すぎて頭痛かった。破裂するかもと思ったが、これの帰りの電車の中でひと眠りしたら少し治まった。

あたまに染みだす血のような、シャクヤクの赤ではありませんか。
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唐の時代のことですが、和尚に弟子が質問した。
萌芽未発時如何。
萌芽もいまだ発せざるの時、如何(いかん)。
―――芽生えさえもまだしていない時は、どのような状態なのでしょうか。
萌芽未発、とは、何の兆しもない真の空、父母未生前(おやじやおふくろさえ生まれていない)の状態のことです。おそらく弟子は、悟りの境地とはそういうものではないか、と問うたのです。
趙州従諗(じゅうしん)和尚が答えた。
齅著即脳裂。
齅著(きゅうぢゃく)すれば、即ち脳裂せん。
「齅」は「嗅」と同じです。
―――おまえ、そんな世界の匂いを嗅いだら、その瞬間に頭が破裂するぞ!
次元が違うような世界なので、人間の脳みそでは理解できない、というのです。そんな世界に嗅覚などの五感で触れたら発狂しちゃうよ。
じゃ、じゃあ、師匠、
不齅時如何。
齅(きゅう)せざる時は、如何。
―――齅がなければ、どうですか。
五感で触れずに、遠くから観察して、思索するだけなら・・・
無者閑工夫。
者の閑工夫無し。
「者」は「這」(しゃ。「この」)と同じ。
―――そんなヒマなことはせん。
わしにはそんなヒマはないのだ。早く嗅いで頭が裂けて死んでしまえば、大いなる知恵を得ることもできように。
また、ある大臣がやってきたとき、
師掃地。
師、地を掃く。
和尚は地面を掃除していた。
大臣は訊いた、
大善知識、為什麼却掃塵。
大善知識、什麼(しも)が為に却って塵を掃く。
―――和尚様のような賢いお方が、なんのためにわざわざゴミを掃除しておられるのですかな?
もちろん、「掃除は掃除当番にやらせておけばいいのでは」と言っているのではなく、「もう取り除くべき煩悩とかないはずなんじゃないんですかね」と訊いている。もう少し突っ込めば、
「人から何か問われるためにそういう行動をしているのでは?何かのためにする行為をしているのではないですか?悟ってないのでは?」
と攻撃しているのです。
和尚が言った、
従外来。
外より来たり。
―――外から来る(ので、掃き清めねばならんのだ)。
もちろん、「おまえのようなやつが」ということです。
すると、別の僧が訊いた。
清浄伽藍、什麼有塵。
清浄の伽藍に什麼(しも)として塵有る。
―――清らかなこのお寺に、どうしてゴミがあるのですか。
こちらの心が悟りきっていたら、誰かが汚すということは無いのでは?
師答えて曰く、
又一点。
また一点なり。
―――また一つ、来おった。
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「趙州録」巻中より。わはははー、まいったか。わしの勝ちじゃ。わしは、わしは強いのじゃ!
―――いやいや、現代のすぐれた観点(グローバリズムやハーバード経営学などの)からすれば和尚は既得権益にあぐらをかいていると確実に言える。論破終了。
今日はもう早く寝なければなりません。頭破裂して悟ってしまいそう。