烏鳴無好音(烏鳴くに、好音なること無し)(「酉陽雑俎」)
夕方公園でカラスが鳴いていました。不吉だ。明日から(個人的に)怖ろしいことが起こるのでしょうか。(実際は、間もなく天気が変わるのだと思います。二日間雨降りでしたが、明日は晴れるのでは。)

だ、だいじょうぶじゃ、わしのように幸福に・・・ぐはっ!
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カラス占いというのがあるのだそうです。
それによれば、
烏鳴地上、無好音。
烏の地上に鳴くは、好音なること無し。
カラスが地面に近いところで鳴くときは、どんな場合でも悪い知らせである。
しかし、わたしの知るところでは、
人臨行、烏鳴而前引、多喜。此旧占所不載。
人の行かんとするに臨みて、烏鳴きて前引すれば、多く喜びあり。これ旧占の載せざるところなり。
誰かが旅立とうとするときに、カラスが鳴いて先導してくれるなら、吉兆である。いいことがありますよ。これは、これまでの占い書には書かれていないことです。
また、貞元十四年(798)のこと、河南の節度使、李納と田緒の支配する境域に、
群烏飛入、銜木為城。高至二三尺、方十余里。納緒悪而命焚之、信宿如旧。
群烏飛び入りて、木を銜えて城と為す。高さ二三尺に至り、方十余里なり。納・緒悪(にく)みて命じてこれを焚くも、信宿にして旧の如し。
「信」は、「二晩泊る」。「春秋左氏伝」(荘公三年)にいう、
凡師一宿為舎、再宿為信、過信為次。
およそ師一宿するは「舎」と為し、再宿するは「信」と為し、「信」を過ぎれば「次」と為す。
一般に、軍隊が一泊するのを「舎(やど)る」といい、二泊するのを「信(やど)る」といい、二泊以上になると「次(やど)る」という。
という、本来は軍事用語です。
カラスの群れがやってきて、それぞれくちばしに木切れを咥えてきて、(それを落として)垣のように積み上げて城郭を造った。高さは一メートルちかく、広さは五キロ四方もあったのである。李納と田緒は不吉だと思って兵士らに命じてこれを焼かせた。しかし、二晩過ぎて三日目には、もとのように積み上げられていた。
このとき、
烏口皆流血。
烏口みな流血す。
カラスたちは、みなくちばしから血を流していたという。
なんでそんなに必死になっていたのか知りませんが、それから五十年ぐらい経ちますが、何の前兆であったいまだにわからない。河南節度使はこのあとしばらく持ちこたえたので、そのよき知らせだったのか、もちろん李納も田緒もその後滅びたが、滅びた人は彼らだけに限られるわけでもない。
占いは難しいのである。
これも書物には載っていないことですが、
俗候烏飛翅重、天将雨。
俗に、烏の飛ぶに翅重きを候えば、天まさに雨ふらんとす、と。
人民たちの間では、カラスが飛んでいるときに、翼が重そうであれば、間もなく空から雨が降り出す、といわれている。
これは科学であって占いではないであろう。天気の変わる前には、ドウブツたちは活動を変える。逆に、カラスが鳴けば雨が揚がるのである。
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唐・段成式「酉陽雑俎」巻十六より。ほんとは意外と縁起がいいみたいです。