表面は平和な社会に見えます。
夫婦相得(夫婦相得たり)(「清通鑑」)

本日はお休みさせていただいて、調査に出かけしました。

仲が悪いのは食わないでワン。ブタが食うかも。

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お休みで出かけてみたところ、カップルや家族連れのみなさんのよくお見掛けしました。仲の良い人が多くてほっとしますね。

清(この時の国号は「金」)太宗・ホンタイジの天聡八年(1634)、まだ長城より南は明の時代(崇禎七年)でございますが、その二月、金国の葬祭令が定められた。

その中にいう、

平居夫婦相得。

平居において夫婦相得るもの

普段から、夫婦が仲良かった場合は―――

婦人有欲殉其夫者、夫死、許其妻殉。

婦人、その夫に殉ぜんと欲する者、夫死せば、その妻の殉ずるを許す。

おくさんがだんなが死んだ時に一緒に殉死したい、と思っていたら、だんなが死んだ時に申し出ればおくさんの殉死を許可する。

と書いてあります。

しかも、

仍行旌表。

仍りて旌表を行う。

その行為を称賛する旗を賜り、家の前に立てることとさせる。

というのです。殉死できた上に、名誉の旗までもらえるのですから、仲良くしておかないといけませんね。

ただし、

若妻不殉、而逼死房婢以代殉者、其妻論死、其不相得之妻及房婢、倶不許殉。

もし妻殉ぜず、而して房婢に死を逼りて以て代殉せしめんとする者、その妻は死を論じ、その相得ざるの妻及び房婢、ともに殉を許さず。

妻が殉死しようとしない場合で、住み込みの婢女に(あの世で世話をする人がいないといけないので)代わりに殉死を強制しようとした場合、その正妻には死罪を求刑する。また、その(殉死しようとしない)仲良くなかった妻と婢女には、どちらも殉死は許さない。

許されないだけでなく、

若違禁自殉、則棄其尸、仍令其家賠婦人一口入官。

もし禁に違いて自殉せしとき、すなわちその尸を棄し、仍りてその家に婦人一口の入官を賠せしむ。

以上の規定を違えて自分で勝手に殉死した場合には、そいつの死体は野ざらしにし(葬式を許さない)、その上でその家から、女性一人を役所に寄付させて国家に賠償させる。

これらについて、

有首告者、将首告之人准離本主。夫族兄弟各坐以応得之罪。

首告する者有れば、首告の人をもって本主より離るるを准(ゆる)す。夫族兄弟おのおの応得の罪に坐す。

最初に通報してくれた者があった場合、最初に通報した者については、その家の主人から離れ、自由な身分となることを許す。また、夫の親類・兄弟は、それぞれしかるべき罪に処する。

んだそうです。

親類が妻や女中をむりやり殉死させたり、彼女らが勝手に自殺することが無くなって、ひとびとはたいへん感謝したとのことである。

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「清通鑑」前編巻二十三より。この前年に、父や兄が死んだときにそのおくさん(生母を除く)を子や弟が娶ることを禁止してますので、殉死でもさせないと家長との関係で後々もめるなあ、ということもあったのでしょう。

なお、編者はこの文章を清王朝の正式の記録である「太宗実録」から引用しているのですが、当時の「満文档案漢訳」(満州文字で書かれた実際の行政文書を漢文に直したもの)を参照すると、清王朝が成立した後、正式の「実録」を編集する時に、重大な「カイザン」がなされているそうです。

・・・原文書では、「棄其尸」の後ろに、「喂犬」の二文字がある。

すなわち、

その尸を棄てて犬に喂(くら)わす。

その死体は、野ざらしにしてイヌに食わせる

という法令になっていた、ということです。ワンコのエサが減って残念でワン。

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