12月4日 わしだって、という思い出もなし

臨色不乱(色に臨みて乱れず)(「不下帯編」)

昨日、40年ぐらい前に暮らした町に行ってきました。涙流れるぐらい懐かしいが、考えてみると武勇伝一つ無い空っぽな青春時代であったなあ。

こんなおっかないのに誘われたらどうするんだよー。

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清の時代の人が言っているんですから、もう今となっては「古い」かも知れませんが、

士無他過悪、惟揺欲一染、則名必被黜、廃棄終身。

南宋の朱晦庵先生はカタブツに見えて意外と人生の裏表を理解している人ですが、

世上無如人欲険、幾人到此誤功名。

と言っているのは、

非虚語也。

逆に、

若能臨色不乱、則神明鑑察必登上第。

明の陸容という人は、灯火を掲げて夜中まで勉強していたところ、

有女穴牗誘之、陸不為動、吟詩。

風清月白夜窓虚、有女来窺笑読書。欲把琴心通一語、十年前已薄相如。

―――――「琴心」とか「相如」は、「史記・司馬相如列伝」に出る故事を引いています。すなわち、司馬相如は貧しかったので、王吉という人と示し合わせて、富豪の卓王孫の家での宴会で、王吉の勧めによって琴を弾いた。

相如為鼓一再行。是時卓王孫有女文君、新寡好音。以琴心挑之。文君竊従戸窺之、心悦而好之。

かくして、

文君夜亡奔相如。

見て来たようにおもしろいですね―――――。

陸容の詩はこの故事を引いて、自分は駆け落ちしない、気を引く気もない、と言っています。

この(女を振り向かないということの)効果によって、陸容さまは、

後登第。

明の時代なんて数百年前のことだから信じられない、という人もいるかも知れませんので、わたしの母方の祖父・童欽承さまのお話をしておきましょう。祖父は科挙に合格して兵部に勤務した人ですが、

諸生時、館於貴室、亦於昏夜却一女。詩以自警。

曰く―――

神明咫尺凛幽居、独夜頻将不可書。自是琴心従未解、非関平素薄相如。

これはすばらしい。

和陸之作而意更深。

琴心が解けていない、なんて上手いね。

そして、我が祖父は、

旦托故辞去。是真臨色不乱者。

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清・金埴「不下帯編」巻二より。おじいちゃんの話は怪しいですね。孫相手に武勇伝しているだけかも知れません。
岡本全勝さんに紹介していただいたので、訪問いただいた方が普段の四倍ぐらいになっています。普段来てない人に言っときますが、普段はもっとタメになるお話ばかりなんですよー!

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