攀欄大笑(欄を攀じりて大笑す)(「酉陽雑俎」)
大笑いするほどのことではないのですが、予定稿うまく行ったみたいで喜ばしい。

これはオレのことかもコ。
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唐の時代のことですが、貴族の独孤叔牙(どっこ・しゅくが)が
常令家人汲水、重不可転。
常に家人をして水を汲ましむに、重くして転ずべからず。
いつも召使いに井戸から水を汲ませていたのだが、ある日のこと、水を汲もうとしても、井戸車が回らないぐらい重かった。
報告を受けた叔牙も様子を見に来て、
「誰か手伝ってやれ」
と他の召使にも命令したので、
「へいへい」「わかりましたよ」「人使い荒いなあ」
とぶつぶつ言ったかどうかは知りませんが、
数人助出之、乃人也。
数人が助けてこれを出だすに、すなわち人なり。
数人で手助けして縄を牽いて井戸桶を持ち上げたところ、上がってきたのは人間であった。
「あははははははは、うっしっしししししし」
その人は、
戴席帽、攀欄大笑、却墜井中。
席帽を戴き、欄を攀じりて大笑し、却って井中に墜つ。
フェルトの帽子をかぶっていたが、井戸桁に手をついて大笑いし、そして、また井戸の中に落ちて行った。
「な、なんですか、今のは」「わからん」
ところで、
汲者攬得席帽、掛于庭樹。毎雨所溜雨処、輒生黄菌。
汲者、席帽を攬(と)り得て、庭樹に掛く。雨ふるごとに、溜雨するところの処に、すなわち黄菌を生ぜり。
井戸汲み担当のやつは、落ちていく前にその人のかぶっていたフェルトの帽子を引っ掴んで取り上げていた。
「また出てきて探すといけないから」
と庭の木に引っ掛けておいたところ、その後、雨が降るたびに、その帽子に溜まった水が落ちる地面には、いつも黄色いキノコが生えたのであった。
なんという不思議なことであろうか。
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唐・段成式「酉陽雑俎」巻十五より。この事件では黄色いキノコの正体も気になりますが、この人がどぶんとまた落ちてからどうなったのかも記述してほしいところですね。彼は何を笑っていたのだろうか。黄色いキノコを食べて大笑いしていたのかも。思えば、キノコも無しにそんなに大笑いできる日が、人生にどれほどあるのであろうか。