1月31日 現代のようなすぐれた時代なら有名に

死人手(死人の手)(「右台仙館筆記」)

ヨーロッパに「奇蹟の手」という伝説があります。何人も殺した極悪人の死体から左手を入手すると、如何なる病も治せる力を持つという。

おいらのようなごくあくにんなら、あの世でもはばを利かせるぜ。

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清の終りに近い時代のことですから、そのヨーロッパの話を聞いて作った話なんだと思います。絶対。

湖北の某という媼(ばばあ)は、乳医とか収生婆といわれる職業婦人であった。要するに助産婦さんです。若いころは他の助産婦と変わりなかったが、

一日、偶於田間拾得死人手一、携帰供奉之、嗣後其術益神。

どういうところが神がかっているかというと、

有召之者、或即時而往、或遅之又久而往。其至也、必適届其婦産時、未嘗早至以待、亦未嘗有不及也。

そして、

一入其門、即知所生之為男為女、百不一爽。

99%以上ということです。

亦有呼之不至者、則此婦必危矣。

そういう人でしたが、

所至不索重酬、然竟以此起家。年八十余而卒。

其晩年不軽為人収生。

「へー、謝礼は安くてもよかったのに、だんだんお高くとまってしまったのかな」

「ああ、いやいや、そうそう、

有難産者召之、猶時為一往。

「へー、ところで「死者の手」はどこに行ってしまったの? まだその家にあるのかな」

「ああ、いやいや、そう、そうだよ。今となってはその行方を知る者はいないんだ」

「へー・・・」

この話は本当なのであろうか。

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清・兪樾「右台仙館筆記」巻六より。さすがは晩清の大儒、日本にも文通する弟子がたくさんいた東アジアの有名文化人です。まわりには不思議なことばかりあったんでしょうね。現代でSNSのあるすぐれた時代ならもっと有名に・・・

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