周人悪媒(周ひと、媒を悪む)(「袁氏世範」)
世の中には、本来ブラックボックスが必要なんでしょう。すべてが明るみに出ている時、人間社会は成り立ちうるのであろうか。

お前たちの所業は、熊野誓紙がすべてお見通しでカア。
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周の時代の官職を記した(とされる)「周礼」に、古代には「媒氏」という役人がいて、
主万民之判合。
万民の判合を主(つかさ)どる。
人民どもを番い合わせるのを所管する。
とされています。「周礼」は古代にそんな発達した官僚組織なんかあるはずないやろ、と思う一方、社会風俗の反映と考えればなかなか参考になることが書いてある古典です。肝冷斎雑記の漢文日録30.6.30を参照いただきたいところですが、リンク貼れないですよねー。平成時代にはこんな碩学がおられたのだなあ。
この媒氏は、当時、憎まれたのだそうです。・・・と、宋代のひとが言っています。
古人謂周人悪媒。以其言語反復、紿女家則曰男富、紿男家則曰女美。
古人謂う、「周ひと媒を悪む」と。その言語反復して、女家を紿(あざむ)きて男富めりと曰い、男家を紿きて女美なりと曰うを以てなり。
むかしの人は、「周代のひとは、この媒氏という役人を憎んだものだ」と言っている。彼(女性かも知れないのですが)が両方に対して往復してものを言い、女性がたの家には「この男は金持ちだ」とうそを言い、男性がたの家には「この女は美人ですのよ」とうそを言うからである。
男はカネ、女はビジュアル、とは恐れ入りますね。このあたりから既に正義の観点からは間違っているわけですが、ここでは不問にして先に進みます。
近世尤甚、紿女家則曰男家不求備礼、且助出嫁遣之資、紿男家則厚許其所遷之賄、且虚指数目。
近世尤も甚だしく、女家を紿きて男家礼を備うるを求めず、かつ嫁遣の資を助出すと曰い、男家を紿きてその遷るところの賄を厚許し、かつ数目を虚指す。
近年(宋代)はもっとひどくなって、女性がたの家を欺いて、「男性がたの家では嫁入りの道具は習俗のとおりでなくていい、さらには嫁入りの費用を一部負担したいと言ってますのよ」と言い、男性がたの家を欺いて、「持参するものはたいへん分厚いのですよ、それ以外にもこれこれしかじか」と指を折る。
ビジュアルが抜けてカネだけになってしまいました。これは男女平等化して高評価?
若軽信其言而成婚、則責恨見欺、夫妻反目、至于仳離者有之。
もしその言を軽信して婚を成せば、すなわち欺かるるを責め恨み、夫妻反目して、仳離(ひり)に至るものこれ有り。
「仳離」は「二人で並んでいるべきものが離れること」すなわち「離婚」のことです。
もし媒氏のコトバを軽々しく信じて結婚してしまうと、すぐに騙されていたことが分かって互いに責めあい、恨みあい、夫妻が目をそむけあって、離婚してしまうものがあるのである。
大抵嫁娶固不可無媒、而媒者之言不可尽信如此。宜謹察于始。
大抵、嫁娶はもとより媒無かるべからず、而して媒者の言はことごとく信ぜられざることかくの如し。よろしく始めに謹察すべきなり。
だいたいにおいて、嫁をもらう時には仲媒者がないわけにはいかないものである。そして、仲媒者のコトバはこのように信用できないものなのである。最初のところでよくよく考えねばなりません。
さらに現代では、もう誰も騙してくれないからあんまり結婚しなくなりました。まだする人がいるのが不思議なくらいなので、結婚するひとがいたら祝福しましょう。
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宋・袁采「袁氏世範」巻一「睦親」(親族仲良く)の巻より。封建道徳ばりばりの袁采が言っているので何やらおかしみもあるのですが、現代のひとが聞いても「はあ、それで」だと思います。男性学という学問があるらしいですからそちらで勉強してもらってもいいかも。このページはもったいないので、男女の婚嫁のことに限らず、人間関係や経済関係など全般に当てはめて考えてみればいいのかも。
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