仰天大笑(天を仰いで大笑す)(「説苑」)
その人には、仰天するぐらいオモシロいことがあったのでしょう。

ぎゃーす。おれのアホ知恵も使えでカー。
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斉の威王の十三年(前344)のこと、
諸侯挙兵以伐斉。斉王聞之、惕然而恐、召其群臣大夫。
諸侯、兵を挙げて以て斉を伐つ。斉王これを聞き、惕然(てきぜん)として恐れ、その群臣大夫を召す。
各国の諸侯が連合して、全兵力で斉を攻めようとしていた。斉王はこの情報を得て、ぶるぶる震えて恐れ、部下や重臣たちに集合をかけた。
集まったみんなを前にして斉王は言った、
有智為寡人用之。
智有らば寡人のためにこれを用いよ。
「知恵のある者は、わしのために使ってくれ。どうすればいいだろうか」
みんな「むむむ」と腕組みして、他の人が何かを言ってくれるのではないかと顔を見合わせる。
すると、
「ああっはっはっはっはあ」
於是博士淳于髠仰天大笑。
ここにおいて博士・淳于髠、天を仰いで大笑す。
この時、「物知り」の淳于髠(じゅんう・こん)が、上を向いて大笑いしはじめた。
王も皆の衆も淳于髠の方を見た。が、
不応。
応ぜず。
淳于髠は笑い終わると、それ以上、何も答えなかった。
王、復問之。
王またこれを問う。
王はまた、皆の衆に同じことを問うた。
又大笑不応。
また、大笑して応ぜず。
淳于髠は、また大笑いして、しかしそれ以上何も言わなかった。
三問。三笑不応。
三問す。三笑して応ぜず。
三回目の問いかけをした。三回目の大笑いをして何も言わなかった。
〇本〇ちゃんのギャグみたいになってきました。しつこいので、このままでは視聴者が飽きてチャンネルを換えてしまうぞ。
王、艴然作色、不悦曰、先生以寡人語為戯乎。
王、艴然(ほつぜん)として色を作し、悦こばずして曰く、「先生、寡人の語を以て戯れと為すか」と。
王は色をなして怒り出した。不愉快そうに言った、「先生は、わたしのコトバをギャグか何かだと思っておられるのか!」と。
淳于髠は答えて言った、
臣非敢以大王語、為戯也。臣笑臣隣之祠田也。
臣、あえて大王の語を以て戯れとなすに非ざるなり。臣は、臣の隣の田を祠るを笑うなり。
「これは失礼いたした。やつがれが何で大王さまのコトバをギャグかなんかだと思いましょうか。やつがれは、今朝、隣の家が田んぼの神を祠る儀式をしていたのを思い出して、つい笑ってしまっておったのです。
以一奩飯、一壺酒、三鮒魚、祝曰、蟹果者宜禾、洿邪者百車、伝之後世、洋洋有余。
一奩(れん)の飯、一壺の酒、三の鮒魚(ふぎょ)を以て、祝して曰く「蟹果(かいか)のものは禾に宜かるべく、洿邪(おじゃ)のものは百車あるべく、これを後世に伝えて、洋々として余り有れ」と。
隣の一家は、田んぼの神に、一はこのご飯、一壺の酒、あとはフナを三匹供えて、祈って言うには、
「高地にある田んぼには稲がたくさん稔るように、湿地にある田んぼには百台の車で運ぶような収穫がありますように。来年も再来年も、ずっと未来まで、みちみちて余りありますように」
と。
臣笑其賜鬼薄而請之厚也。
臣、その鬼に賜うこと薄くしてこれに請うことの厚きを笑うなり。
やつがれは、あの一家が、神さまへのお供えものは大したことないのに、祈っている内容が大きいので、思い出して笑ってしまっておりました」
「むむむ」
於是王乃立淳于髠為上卿、賜之千金、革車百乗、与平諸侯事。
ここにおいて、王すなわち淳于髠を立てて上卿と為し、これに千金、革車百乗を賜い、諸侯を平らぐの事に与(あずか)らしむ。
そこで、王はすぐに淳于髠を上級大臣に任じ、千万円の黄金と、皮革で護った戦車百台を与え、諸侯と和平を結ぶ仕事に参画させた。
諸侯聞之、立罷其兵、休其士卒、遂不敢攻斉。此非淳于髠之力乎。
諸侯これを聞き、立ちどころにその兵を罷め、その士卒を休め、遂にあえて斉を攻めず。これ、淳于髠の力に非ざるか。
諸侯はこの情報を聞き、(斉王が本気で和平に対応するつもりだと理解したのだろう、)ただちに進軍を止めて、動員した将士を解散して、あえて斉を攻めようとはしなかった。
これは、淳于髠の手柄というべきではなかろうか。
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漢・劉向「説苑」第八「尊賢篇」より。因果関係はちょっとわからないですが、賢者は尊敬した方がいいと思いますよ。賢者なら。さらに追い込まれたら、八咫烏が「あほー、あほー」と知恵を貸してくれるかも。おのれがオロカだと覚ることが、知恵の第一歩・・・かも知れないではありませんか。
花が花の本性を現じたる時最も美なるがごとく、人間が人間の本性を現じた時は美の頂上に達するのである。善はすなわち美である。(西田幾多郎「善の研究」第三篇第九章)
なのだそうですから、本性がオロカであれば「あほー」と言われたときにこそ本性を現出し、美にして善となると言いうるのである。人工知能で賢くなったつもりではいけません。
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