政事殺民(政事もって民を殺す)
また寒波が来るなどと、みんなシアワセになろうとしているのに、なんで本当のこと言うんですか。怪しからん、やっつけてしまえ。みたいな世の中でございます。

暖かくなったから、あと二三日ぐらいでもうハダカで暮らせるかも。もう服は買わなくていいんだ。
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今日は本当のことを言ってみなさんを困らせてみようかと思います。
北宋の劉十功というひとは、濱州(山東)安定の人である。
弱不好弄、及長、築室于環堵之間、不語不出者三十余年、或不食。
弱にして弄を好まず、長ずるに及びて室を環堵の間に築きて、語らず出でざること三十余年、あるいは食らわず。
若いころから游ぶのが嫌いで、大人になってからは一室を築きそのまわりにぐるりと垣根を設け(つまり出口がない)、人と語らず出かけもせずに三十年以上になった。また、時には食べもしなかった。
徽宗皇帝がその名を聞いて、しばしば地方官を通して都に出て来るように促したが、出てこない。そこで侍従を遣わして招くことにした。ところが、
吾有厳願、不出此門。
吾に厳願有り、この門を出でず。
「わしは固く誓った願いがあるのじゃ。すなわちこの垣根から出ないこと!」
と叫ぶばかりであったので、その報告を受けた徽宗皇帝も諦めた。代わりに、
賜号高尚先生。
高尚先生の号を賜う。
皇帝自ら、「高尚先生」という呼び名を下さったのだった。
侍郎(省の次長クラス)になった王子常さまが、手紙を送って、
問以修行之術。
問うに修行の術を以てす。
道教の教えを守り行いを修める方法を訊いてみた。
すると、手紙が返ってきて、曰く、
非道亦非律、又非虚空禅、独守一畝宅、惟耕己心田。
道に非ずまた律にあらず、また虚空禅にあらず、独り一畝の宅を守りて、ただ己の心田を耕すのみ。
宋代の一畝は5.6アール。宅地としては今の日本の建売住宅よりは広いぐらいでしょうか。
道教ではダメだな。仏教の律を守っていてもダメだ。虚空に逃げる禅でもダメだ。たった一人、5~6アールの家に住んで、毎日自分のこころという田んぼを耕やし続けることじゃな。
また、
以手捫胸、欲心清浄。以手上下、欲気升降。
手を以て胸を捫(な)で、心を清浄ならしめるを欲す。手を以て上下して、気を升降せしめるを欲す。
手で胸を撫でて、心を清らかにしなされ。手を上げたり下げたりして、気を体の中で登り降りさせなされ。
簡単でしょう。だが次は簡単ではないかも知れない。
常人以嗜欲殺身、以財貨殺子孫、以政事殺民、以学術殺天下後世。吾無是四者、豈不快哉。
常人は嗜欲を以て身を殺し、財貨を以て子孫を殺し、政事を以て民を殺し、学術を以て天下後世を殺す。吾にこの四者無きは、あに快からざらんや。
ふつうの人は、欲望のせいで自分自身をダメにしてしまう。財産を遺すことで子孫をダメにしてしまう。政治を行って人民をダメにしてしまう。学問芸術を行って天下をダメにし後の世まで破壊してしまうんじゃ。
ところが、わしはこの四つのことをしない。なんと愉快なことではないか。
この気持ちを失わないことが修行である。
その後、
靖康之変、不知所終。
靖康の変より終わるところを知らず。
金によって北宋が滅ぼされた靖康の変(1126)以降、行方不明になって死んだかどうかもわからない。
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清・潘永因編「宋稗類鈔」巻二「隠逸篇」より。いい話だなあ。もちろん欲望、財産、政事、学術の四つの事をしてはいけませんが、それより「終わるところを知らず」に世の中から消えていくところがすばらしい。しびれる。あこがれる。
ビジュアルのいい人ばかり採用して、マウントを取れるような服着せて、SNSなどを利用して数億円かけて宣伝していれば、そのうちこの省庁も「きゅんとさせられた」「言っていることはともかく応援したくなるよね」と言われるようになることでしょう。
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