名之沙魘(これを沙魘(さえん)と名づく)(「山居新語」)
「沙魘(さえん)」から覚めることができるだろうか。

長き夜の遠のねぶりのみな目覚め波乗り船の音のよきかな。
誰もみないつかは目ざめて、「ああよく寝た、変な夢見たなあ」とつぶやく時が来るんだと思います。
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元代のことですが、湖南の益陽州は少数民族も多い辺境の地であった。この地では、
毎有人夜半忽自相打、莫暁所謂、名之曰沙魘。
つねに人の夜半に忽ち相打つ有りて、謂うところを暁(さと)らず、これを名づけて「沙魘」(さえん)という。
ひとびとが夜中に、突然互いに殴り合いはじめることがよくある。なぜ殴り合いになったのか、その事情や理由はよくわからない。このような事態を当地では「砂妖怪のたたり」と言っている。
都から赴任した者などは、この事態が起こるとどうすればいいのかわからないのだが、
土人知此証者、唯以冷水澆潑、稍定以湯水飲之、徐徐方醒。
土人この証を知る者、ただ冷水を以て澆潑し、やや定まりて湯水を以てこれに飲ましめ、徐々に醒めんとす。
地元民でこの症状の治療法を知っている者を見ていると、まずは冷たい水をばしゃばしゃと注ぎかける。すると少し落ち着くので、そこでお湯を飲ませてやると、だんだんと覚めはじめる。
ただし、それ以降も
二三日即如酔中不知者、殊用驚駭。
二三日即ち酔中の知らざる者の如く、殊に驚駭を以てす。
二三日の間はまったく酔っぱらって前後不覚に陥った者のようになってしまうので、びっくりしてしまうことがある。
「あなたは見たことがあるのかね?」
いや、実は見たことがないのです、しかし、
上海県達魯花赤兀訥罕至正初為本州同知、因造漆器。匠者八人一夕鬧、親歴此事。嘗与余言之。
上海県の達魯花赤(だるがち)・兀訥罕(ゴツトツ・ハン)、至正初に本州同知と為り、因りて漆器を造らしむ。匠者八人一夕鬧(さわ)ぎ、この事を親歴せり。嘗て余のためにこれを言う。
浙江・上海のダルガチ(収税官)であったゴツトツ・ハンが、至正年間(1341~70)の初めごろにこの州の知事代理になり、’漆を採って漆器を造らせた。その時、職人八人がある晩けんかをして騒ぎ始め、この「砂妖怪のたたり」を自らの目で見たそうで、ある時わたしに話してくれたのである。
だから本当のことである。
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元・楊瑀「山居新語」より。突然大騒ぎして争い合う、まるで競争社会を見るようではありませんか。その後も、酔ったように前後不覚になって、なかなか覚めない。覚めればいいのですが、一生涯競争に追い回されている人も多いのである。哀しいかな。
移行期が過ぎれば競争社会から脱出することができるのでしょうか。
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