貧病両依然(貧病両依然たり)(大沼枕山「除夜」)
28日の続きのような詩です。ただし、七福神には触れていません。

意外といい年だった・・・ということでよろしいでしょうか。来年はえらいことになるかも。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
百般心事五更天、無限悲歓集目前。
百般の心事、五更の天、無限の悲歓、目前に集む。
いろんなことが思い出される、深夜の空に。
限りない悲しみとよろこびが、目の前に集まっている。
「五更」はほんとは夜明け間際の午前四時とか五時ごろですが、ここでは深夜を言っているのでしょう。
呈笑瓶梅陪冷飲、尽情灯火照孤眠。
笑まいを呈す瓶梅は冷飲に倍し、情を尽くせる灯火は孤眠を照らす。
ほほえみを見せてくれるのは瓶に挿したウメの花だ。おれの冷酒に付き合ってくれる。
情けを尽くしてくれるのはともしびだ。おれの独り寝の姿を照らしてくれる。
この対句はウマいんですが、少し技巧が過ぎるような気がします。
不材空愧逢昭代、多難猶欣過厄年。
不材にして空しく愧ず、昭代に逢うを、多難にしてなお欣ぶ厄年を過ぎるを。
おれは、この佳き時代に会いながら、何の役にも立たないのを意味なく恥じている。
しかし、いろいろ困難なことがある中でもうれしいではないか、今宵おれの厄年が過ぎた。
来年はいいことあるかも。けれど、
故態今宵除未得、春来貧病両依然。
故態(こたい)に今宵除するをいまだ得ざるは、春来たるも貧病両(ふた)つながら依然たらん。
「故態」は「もとどおり」の意。
今宵の除夜を過ぎてももとどおり除くことができないのは、新春においても貧乏と病弱とは、どちらもそのままであろうこと。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
本朝・大沼枕山「除夜」(「明治大正名詩選」前篇所収)。新暦と違って旧暦だから、寒さも明日からは少し弛む予感があるんでしょう。来年はめでたいといいですね。この佳き時代に会いながら、何の役にも立たないわれらだが。
コメントを残す