門冷如氷(門冷えて氷の如し)(大沼枕山「歳晩書懐」)
今日は伊豆大島に来ているのですが、寒い。もう早く寝ます。(予定)

人生とはよく眠ることと見つけたり!寝ている間にサッチャー改革見直しされてるかも。
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門冷如氷歳暮天。衡茅林麓鎖寒煙。
門冷えて氷の如し、歳暮の天。衡茅、林麓も寒煙に鎖(とざ)さる。
門は冷え冷えとしてもう氷のようであろう。間もなく年も暮れようとする冬の日だ。
衡門(粗末な冠木門)の屋根の茅も、山すその林も、冷たい霧に閉ざされて行く。
牀頭旧暦無多日、鏡裏春風又一年。
牀頭の旧暦には多日無く、鏡裏(きょうり)の春風また一年なり。
ベッドの枕元に置いた今年のカレンダーには、もう何日も残っていない。
鏡の向こう側には次の一年の春風がひそんでいることであろう。
「鏡裏の春風」はたいへん新鮮な詩語ですね。ちょっと驚きました。
技拙未成求舎計、家貧只用売文銭。
技は拙にしていまだ求舎の計を成さず、家貧にしてただ売文の銭を用う。
生活の技量が下手くそなので、いまだ新しい家に移転する計画はできあがらない。
家計は貧乏なので、いま使えるのは詩文を売って稼いだカネだけだ。
なんとか正月を越さねばならぬ。
間来揀取新詩句、市酒猶能祭浪仙。
間来、新詩句を揀取して、酒を市(か)いてなおよく浪仙を祭らん。
ひまにまかせて、新しい詩の言葉を択び取った。
(これをカネに替えて)酒を買えば、なんとか「波乗り仙人」を祀ることができそうだ。
「浪仙」を「波乗り仙人」と訳してみましたが、これはどう考えても「宝船に乗った七福神」のことだと思います。「鏡裏の春風」ではなくこれ(「浪仙」)がゼニになる新詩句かも。
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本朝・大沼枕山「歳暮書懐」(歳暮に懐(おも)いを書す)七絶(「明治大正名詩選」(昭和十二年・木下彪編)前篇所収)。枕山、名は厚、字は子寿、通称は捨吉。江戸に生まれ、若くして尾張・鷲津益齋の有隣舎に学ぶ。江戸に戻って下谷吟社を創立、「詩界ノ大宗トシテ絶テ比肩スル者ナシ」と言われた。明治二十四年(1891)没、享年七十四。
この詩はまだ幕末の江戸で、秋に火事で焼け出されて借家住まいの年末のようです。
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