髑髏髐然(髑髏髐然(こうぜん)たり)(「荘子」)
外で暮らしている人や動物は辛い季節と思います。ドクロはどうでありましょうか。

おまえらクビ斬りおって、覚えておけよ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二十年・・・ということはないので、十五年ぐらい前でしょうか、馮夢龍の「古今譚概」版を訳した記憶がありますが、みなさんにとっては何度でも聴く価値のある重要なお話ですから、また紹介しておきましょう。「ああ知っている」などと言わずに、読みなされ。
荘子之楚。見空髑髏髐然有形、撽以馬捶、因而問之。
荘子、楚に之(ゆ)く。空なる髑髏の髐然(こうぜん)として形有るを見、馬捶(ばすい)を以て撽(う)ち、因りてこれに問う。
「髐」は「肉が落ちて白骨になった様子」です。オノマトペとすれば「からから」という感じでしょうか。「馬捶」は「馬用のムチ」なので、荘子がそんな贅沢しているとはなかなか想像しづらいのですが、この時、馬車に乗って旅していたようにも推測されます。
荘子が楚に出かけた。途中、すべての肉が落ちてカラカラになった、うつろなドクロが落ちているのを見つけた。まだ形は保っている。荘子は、手にしていたウマ用のムチでドクロを「ばちん」と殴りつけると、問いかけた。
夫子貪生失理、而為此乎。将子有亡国之事、斧鉞之誅、而為此乎。将子有不善之行、愧遺父母妻子之醜、而為此乎。将子有凍餒之患、而為此乎。将子之春秋故及此乎。
夫子、生を貪りて理を失い、これと為れるか。はた、子に亡国の事、斧鉞(ふえつ)の誅有りて、これと為れるか。はた、子に不善の行い有りて、父母妻子の醜を遺すを愧じて、これと為れるか。はた、凍餒(とうだい)の患有りて、これと為れるか。はた、子の春秋の故のこれに及べるか。
ドクロの先生よ、
生きている間に欲望を貪って、体のバランスを崩してこんなことになったのかな。
あるいは、おまえさんの生まれた国は滅亡してしまい、それに巻き込まれたか、あるいは法を犯して斧やまさかりで首を斬られてこんなことになったのか。
あるいは、おまえさんには善くない行動があって、両親やヨメや子孫の恥になってしまうことを悔いて(自殺して)、こんなことになったのか。
あるいは、凍え死んだり餓死したりして、こんなことになったのか。
あるいは、おまえさんの年齢の事情が(死ぬべき定めの時に至って)、こんなふうにしたのか。
そして、
於是語卒、援髑髏、枕而臥。
この語を卒(お)えて、髑髏を援(ひ)き、枕して臥せり。
これだけのことをしゃべり終えると、ドクロを引き寄せて、それを枕に眠ってしまった。
疲れていたのでしょう。ぶうすかぶうすかと眠ったのである。
夜半髑髏見夢。
夜半、髑髏夢に見わる。
夜中に、ドクロが夢の中に現れた。
そして、荘子に向かって言ったのである。
子之談者、似弁士、諸子所言、皆生人之累也。死則無此矣。子欲聞死之説乎。
子の談は、弁士に似るも、諸ろもろの子の言うところは、みな生人の累なり。死すればすなわちこれ無し。子、死の説を聞くを欲するか。
「おまえさんの問いかけは、まるでどこかの遊説家のようだったな。(いろいろ言ってくれたが)おまえさんの言ったことは、みな生きている人間のしがらみ、死んでしまうとすべて無くなることばかりじゃ。ところで、おまえさんは、死んだあとのことを聞きたいかね」
荘子は答えた、
然。
然り。
「もちろん」
髑髏は言った、
死無君於上、無臣於下、亦無四時之事。従然以天地為春秋、雖南面王楽、不能過也。
死すれば上に君無く、下に臣無く、また四時の事無し。従然として天地を以て春秋と為し、南面の王の楽といえども過ぐる能わざるなり。
「死んでしまえば、無理難題をいう上司もいないし、突き上げて来る部下もいない。また、四季それぞれの労働も無い。ゆったりとして、天地の間で永遠の春秋を過ごせばいいのだから、南面して天下に君臨する王者の楽しさもこの楽しみに過ぎることはないのじゃ」
「ほ、ほんとうに?」
荘子、不信、曰。
荘子、信ぜずして曰えり。
荘子はその言葉を信じることができず、言った。
吾使司命復生子形、為子骨肉肌膚、反子父母妻子、閭里知識、子欲之乎。
吾、司命をして子の形をまた生ぜしめ、子の骨肉肌膚を為(つく)りて、子を父母妻子・閭里の知識に反さしむれば、子、これを欲するか。
「わしが生命をつかさどる神に依頼して、おまえさんの体を再生させ、骨や肉は皮膚を作り直して、おまえさんを両親や女房子ども、郷里の知り合いのところに還すようにさせてやろうといったら、おまえさんもそうしたいのではないか」
「うひゃあ」
髑髏深矉蹙頞曰、吾安能棄南面王楽、而復為人間之労乎。
髑髏、深く矉(ひん)し、頞(あん)を蹙(ちぢ)めて曰く、「吾いずくんぞ能く南面の王の楽しみを棄てて、また人間の労を為さんや」と。
ドクロ、深く眉を顰(ひそ)め、鼻をしかめて、言った、
「わしがどうして、(今の)南面して世界を支配する王者の(ような)楽しみを棄てて、また人間世界の苦労をしなければならんのだ!」
と。
・・・ここで終わりなので、目が覚めたのでしょう。
ひからびたドクロがなんで眉を顰めたり鼻をしかめたりできるのか。最初の設定を忘れているのではないか。「南面の王の楽しみより楽しい」と言ってたはずなのに、直後に突然「南面の王の楽しみ(のような)」と同等に引き下げるのも矛盾が甚だしい。
ドクロはボケていたのではないか。
一方、荘子の方も、もし「そうしてくれ」と言われてたら、どうしてたんでしょうね。笑って済ませるつもりだったのか。このひともボケているのかも。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「荘子」至楽篇第十八より。もしもこの先に南面の王より楽しい境遇が待っているとしたら・・・。なんだか、このしゃれこうべのようにカラカラの日々も、生きているのが楽しくなってくるではありませんか。にこにこ。ぼけー。
ドクロについては、これも参考にしてくだされや。暑いころだったなあ。
観ネコ記 令和7年12月27日
先週行けなかったので、二週間ぶりで戸田ネコ見物に。えさやり仲間のひとと情報交換(一方的にもらっているだけだが)に成功。こちら側(人間側)同様いろいろ問題が起こっていることがわかります。
〇ハチは腎臓の機能低下で、保護の人のところにいて、毎日注射打ってもらって生きているが、復帰はムリらしい。
〇外国人らしい二人連れが、捕獲機を持ち込んでネコを捕獲しようとしている。防犯カメラが取り付けられた。
〇奥の茶ミケ(バグ)は失明の上、最近はボケてきたのではないか、方向感覚が全くない。帰って来る時ネコハウスの中まで入れてやってほしい。
などのことがわかりました。
また、駐車場出口のシロネコは夏に足を傷め、最近少し移動できるようになったところだが、若いシマキジも右前足を傷めた模様。交通事故かと思っていたが、高いところからの飛び降り(タヌキ、イヌなどから逃れるため)のせいかも知れません。
コメントを残す