果退三舎(果たして三舎を退く)(「呂氏春秋」)
寒いのに行きたくない。誰か代わりに行ってほしい。全勝さんはまたどこかに講演に行ってるのかな。寒いのにたいへんですね、うっしっし。HP更新できない間にどんどん言いたいこと言っておこう。

不吉なことあったらおれたちオバケにくれ。不吉こそおれたちにとってはパラダイス。
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紀元前5世紀、春秋の末ころのこと、宋の景公は、
熒惑在心、召子韋問焉。
熒惑心に在り、子韋を召して問う。
「熒惑」(けいわく)は火星、「心」は二十八宿のうち、さそり座アンタレスを含む星宿。
災いを起こす赤い星・火星が宋の国を示す「心」宿の範囲に入った。景公は天文大師の子韋を呼んで、如何なることの予兆か問うた。
子韋は言った、
禍当君。
禍は君に当たる。
「君主(であるあなた)に、悪いことが起こりますな」
「そうか・・・」
雖然、可移宰相。
然りと雖も、宰相に移すべし。
「ただ・・・、その国で君主と同じぐらい重要な宰相にならば、禍を移してしまうことができまする」
景公は言った、
宰相、寡人所与理国家也。
宰相は、寡人のともに国家を理むるところなり。
「だめだな。宰相は寡人(諸侯の一人称。わたし)とともに国家をおさめているのだ。宰相を失うわけにはいかない」
可移於人。
人に移すべし。
「それならば・・・、その国で君主と同じぐらい重要な人民にならば、禍を移してしまうことができまする」
人死、寡人将誰為君。
人死すれば、寡人まさに誰が君と為らん。
「だめだ。人民が死んでしまったら、わたしは一体だれを支配するのだ。人民を失うわけにはいかない」
可移於歳。
歳に移すべし。
「ふむ。では、その国で君主と同じぐらい重要な一年の収穫にならば、禍を移してしまうことができまする」
歳飢人餓、誰以我為君。
歳飢え人餓うれば、誰か我を以て君と為さん。
「ダメだ、ダメダメ。収穫が凶作で人民が飢餓におちいるようなことになったら、誰がわたしを支配者だと認めてくれるだろう。収穫を凶作にすることはできない」
子韋は居住まいを正して言った、
君有至徳之言三、天必三賞君、熒惑必退三舎。
君に至徳の言三有り、天必ず三たび君を賞し、熒惑必ず三舎を退かん。
「一舎」は軍隊が一晩泊まることをいい、距離の概念としては軍隊の一日の移動距離三十チャイナ里(15キロ前後)。ただし、ここは天文学の単位なので、天球上の一定の「度数」です。
「とのさまには、ここまでに素晴らしい徳を示すおことばが三つございました。お天道様は必ずとのさまを三回お褒めになることでございましょう。おそらく火星が三舎退散するにちがいないと思います。
一舎行七星、星当一年、君延二十一年也。
一舎七星を行き、星は一年に当たれば、君二十一年を延ばさん。
一舎は天文では七つの星を超えた距離を言います。星一個は一年分に該当しますから、三舎で二十一年。とのさまは二十一年長生きされまずぞ」
確かに、その晩の観測結果では、
熒惑果退三舎。
熒惑果たして三舎を退く。
火星はいつの間にか進行方向を替えて、三舎(二十一星分)戻っていた。
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秦・呂不韋編「呂氏春秋」季夏篇第六より。読者諸兄におかれては、景公がどこかで「それなら女房に・・・」と切り出すと思って心待ちにしてたのではありませんか。
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