下驚龍窟(下、龍窟を驚かす)(「墨余録」)
青森や岩手に津波が来ているようです。

ハニワさまでも土偶でも、土に埋まればみな同じ!
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わしの住む浙江の町の船倉があるあたりには、
向有古井。其地伝為前朝潘宦旧宅。
向(さき)に古井有り。その地、伝えて前朝の潘宦の旧宅と為す。
以前、古い井戸があった。そのへんは、明の時代に、潘さまというお役人の大きなお屋敷であったと言い伝えられている。
潘嘗自海道運糧入都、行抵津門、喜放号炮。
潘、嘗て海道より糧を運びて都に入らんとし、行きて津門に抵(いた)りて、喜びて号炮を放てり。
潘さまはあるとき、東シナ海を通って江南の国有の食糧を北京に運ぼうとし、外交である天津まで到着した。うれしくなって号砲を撃ったのだが―――
これがいけなかったのです。
下驚龍窟、驟作波浪、覆溺百余艘。
下、龍窟を驚かし、驟(すみや)かに波浪を作し、覆溺すること百余艘なり。
海底の龍の棲み処をびっくりさせてしまった。龍はすぐに大きな波を起こしたので、転覆したり沈没したりする船が、百余艘にも達した。
官有物を自らの失敗によって大量に損なってしまったのだ。
按律擬罪、且籍其家。潘有室女、尽以金珠投井而殉之。
律に按じて罪に擬せられ、かつその家籍せらる。潘に室女有り、ことごとく金珠を以て井に投じてこれに殉ず。
法律の適用条文をあてはめて罪に問われる(もちろん死罪)ことになり、また、その財産はすべて没収された。子どもは官の奴隷とされる。
潘には箱入り娘がいたが、これが官の奴隷とされて汚されるよりは、と、家のあった黄金や宝珠をすべて井戸に放り込み、その上から自分も身を投じて、父親に殉じたのであった。
後、有利其物者、方縋取、輒死。
後、その物に利有る者、縋取せんとするも、すなわち死す。
それ以降、その宝玉類を得て富有を図る者が、体に紐を巻いて吊り下げてもらい、井戸の中のものを取り出そうとしたが、計画を立てただけで死んでしまった。
これはたたりがあるようだ。付近の住民は相談して、
遂圧以巨石、相戒弗犯。
遂に巨石を以て圧し、相戒めて犯さず。
とうとう巨大は石を以て井戸に蓋をし、互いに戒め合ってその井戸に足を踏み入れることはないようにしあった。
本朝の嘉慶三年(1798)、県知事の湯燾は、さらに、たたりのないように、
封土為墳、周以繚垣、題曰貞女墓。蓋今尚存焉。
封土して墳と為し、周(めぐ)らすに繚垣を以てして、題して「貞女墓」。けだし今もなお存せり。
井戸を押さえた石の上にさらに盛り土して墳墓になった。まわりにまとわりつく木の垣根を設けて(立入禁止にして)、「正しい乙女の墓」と呼ぶことにした。清末の現代になっても、まだその墳墓は遺っていた。
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清・毛祥麟「墨余録」巻七より。龍が怒ると津波が来るかも知れないのです。だれか怒らせたのか。
全勝さんのHPは特に動きなし。
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