土偶判官(土偶の判官)(「括異志」)
泥人形(の生まれ変わり)でも立派にやれるというのに。

タヌキも何かに化けるかも。転職して化けるやつもいるはずですからね。
(PCが少し(だけですが)言うことを聞くようになり、久しぶりで岡本HPを引用)
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宋の世のことでございます。建州の張氏は夫妻とももう40歳を越えていたが、子供がなかった。そこで二人でしばしば町の守り神である城隍神のお宮(廟)にお参りして、子供を授けてほしいとお祈りしていた。
ある晩、
夢神告曰汝夫婦分当無子。我念汝告祷之虔、今以廟中判官与若為嗣。
夢に神の告げて曰く、「汝夫婦の分はまさに子無かるべし。我、汝の告禱の虔を念(おも)い、今、廟中の判官を以てなんじに与えて嗣と為さん」と。
(夫の)夢の中に城隍神が現れて、告げた。
「実は、おまえたち夫婦に与えられた運勢では、子どもは生まれないことになっているのじゃ。だが、おまえたちの祈りの誠意はよく感じられたので、それを考えて、廟の中のわしのスタッフである泥人形の判官たちから一人を、おまえたちに与えて跡継ぎにしてやろう」
と。
すぐに
其妻妊娠、生一子。
その妻妊娠し、一子を生ず。
張氏の妻が妊娠し、やがて子どもを生んだ。
おそらくこの時、お宮の泥人形が一体減ったのだろうと思いますが、誰かが確認しているわけではありません。
生まれた子は、生来あまり口を利かず、何やらいつもぼうっとしている子であったが、何でも言われたとおり、黙々とやるのであった。字を伯玉といった。
伯玉は成長するにつれて、黙々と勉強して多くの古典を覚えた。次々に試験を突破して、
第進士、挙書判抜粋。
進士に第し、書判を挙げて抜粋さる。
進士に及第し、判決や決定の文書が上手いというので抜擢された。
無口だが清廉で剛直、
為当世所尚、典数郡而卒。
当世の尚(たっと)ぶところと為り、数郡に典して卒す。
当時、ずいぶん重視され、いくつかの郡でスタッフを勤めて、亡くなった。(つまり、判官のままで、知事にはなっていないということです。)
その時、お宮には泥人形が一つ増えたはず、であるが、誰も確認はしていない。
亡くなった時には子どもが何人かいて、張氏の家系は継続したのである。
ところでこの張伯玉は、
嗜酒不修飾、垢貌蓬鬢、如土偶判官焉。
酒を嗜み修飾せず、垢貌蓬鬢にして、土偶判官の如かりき。
お酒が好きで、身を飾ることなどせず、顔はいつも汚れ、髪はよもぎのようにぼさぼさで、周りの人は「お宮にある泥人形の判官さまみたいだ」と言っていた。
城隍廟の土偶判官の生まれ変わりだというのは、そこから逆にできた噂だったのだろう。
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宋・張師正「括異志」巻九より。科学的ですね。
まるで柳田國男の取材した昔話みたいな、ひとびとが伝説や幻想と仲良く生きていたころの素朴で懐かしいお話です。みなさんもじいさんのじいさんのおやじぐらいなら、どこかのタヌキや地蔵の生まれ変わりだったかも知れません。
それはそれとして、明日のドラフト会議で元泥人形みたいな世に知られない有望なやつ、出てくるかな? みなさん祈ってやってください。
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