不惜衣食(衣食を惜しまず)(至正直記)
身と命を惜しまない人もいるのですから服や食べ物なんか要らんやろ。と思うのですが、何も捨てられません。穴のあいた靴下も使われ(指が出てもまだ使える)、賞味期限の過ぎた食べものも、「完全にダメになるまで」冷蔵庫の中にしまいこまれています。これは「大切にしている」と言ってもいいのでは。

そもそも労働の値段が違うんだよな。
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元の時代の人がいうには、
不惜衣装、得凍死報、不惜飲食、獲餓死報、尋常過分、獲貧窮報。
衣裳を惜しまざれば、凍死の報を得、飲食を惜しまざれば、餓死の報を得、尋常に過分なれば、貧窮の報を得ん。
着るものを大事にしないと凍え死にの報いを受けるぞ。
食べるものを大事にしないと、飢え死にの報いを受けるぞ。
何ごとも多めに過ぎると、貧窮の報いをうけるぞ。
と。これを逆に言ったことわざもあります。
惜衣得衣、惜食得食。
衣を惜しめば衣を得、食を惜しめば食を得る。
着るものを大切にしていれば着るものが手に入り、食べ物を大切にしていれば食べ物が手に入る。
此言雖鄙、最是実論。
この言、鄙といえども、もっともこれ実論なり。
この言葉は、決して美しくはないけれど、他にないぐらい中身のあることばである。
以古今之好奢侈暴殄天物者驗之、多不善終。
古今の奢侈を好み天物を暴殄(ぼうてん)する者を以てこれを驗(けみ)すれば、多く善終せざるなり。
歴史上の、ぜいたくで傲りたかぶり、天から与えられた物を乱暴に使い尽くしてしまった人たちを確認してみると、確かにたいていは終わりを善くしない、意に添わぬ死に方をしているのである。
或過于衣服、必貧而無衣、或過于飲食、必貧而無食。
あるいは衣服に過ぎて、必ず貧にして衣無く、あるいは飲食に過ぎて、必ず貧にして食無し。
ある者は着るものにぜいたくしているうちに、必然的にも貧しくなって服が無くなり、ある者は飲食にぜいたくしているうちに、必然的に貧しくなって食べ物が無くなってしまうのである。
中でも、
至于遺剰飯食飯粒于地以飼鶏犬者、往往皆餓死。
剰(あま)れる飯食飯粒を地に遺して以て鶏犬を飼う者に至りては、往往みな餓死す。
余ったメシや米粒を地面にばらまいて、イヌやニワトリのエサにしているようなやつは、だいたいみんな餓死しておる。
ほんとかな。
尋常虚費剪布帛者、多凍死。吾見亦多矣。
尋常虚費して布帛を剪る者は多く凍死す。吾見ることまた多きかな。
いつも無駄遣いして、(代金代わりの)布切れを多く切って(支払いに充てて)いるやつは、たくさん凍死したなあ。わしはずいぶんこの目で見てきたのだ。”
ほんとうに見て来たんですか。
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元・孔斉「至正直記」巻二より。格差社会になってしまって、そうではない(ぜいたくしてればずっとぜいたく、貧乏ならずっと貧乏な)のでみんな悩んでいるんですよね。ああ見よ、今日もかの政治家の方々の、均しからざるを憂えて苦悩し、党利党略して苦し紛れに自ら滅びようとする姿を。
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