此費日廣(この費、日に廣す)(「顔氏家訓」)
自分らしくやるにはおカネが要るものです。遠くに行ったりおでんを食ったり今日も浪費しました。

「銭になるもんは見逃したらあかんで」とケチケチするように、追い込まれてまいりました。まずは精神的に
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南北朝の北斉の時代、都の鄴に若い貴族がおりましてな。
出為襄国令、頗自勉篤。公事経懐、毎加撫恤、以求声誉。
出でて襄国の令たるに、頗る自ら勉篤せり。公事に経懐してつねに撫恤を加え、以て声誉を求む。
河北の襄国の知事に赴任して、たいへん自ら努力した。政治行政に気を遣い、いつも人々に情愛を注いで、それによってよい評判を得ようとしたのである。
凡遣兵役、握手送離、或齎梨棗餅餌、人人贈別。
およそ兵役に遣るには、握手して離るるを送り、或いは梨棗・餅餌を齎して、人人に贈り別す。
兵役に人を派遣するときいは、たいてい手を握り締めて送別するのであるが、その時に、ナシやナツメ(のような果物類)、せんべいやまんじゅう(のような食べ物)を手渡すのであった。
その時、こんなことを言う、
上命相煩、情所不忍、道路飢渇、以此見思。
上命相煩わするは、情の忍びざるところ、道路飢渇すればこれを以て思われん。
「お上のご命令で迷惑をかけるのは申し訳ないところ(だが仕方がない)。旅行中に腹が減ったり咽喉が渇いたりしたら、これを食べてわたしのことを思い出してくれ」
と。
「くうう、なんといいひとやないかい」
民庶称之、不容於口。
民庶これを称して、口に容れず。
人民たちは知事のことをほめそやし、口の中にしまっておくことはできなかった(つまり、口々にそう言い合っていた、ということです)。
及遷為泗州別駕、此費日廣、不可常周。
遷りて泗州別駕(ししゅうべつが)と為るに及びて、この費(ついえ)日に廣く、常周すべからず。
異動して江蘇・泗州太守の次席になると、(行政客体は大きくなったが、長官でなくなったので)そういうことに使う費用がなかなか工面できなくなり、いつも贈与できる、というわけにはいかなくなった。
すると、もらえなかった者などが、「あの人は偽善家だ」と言い出したのである。
実際そうなのだから仕方ないのだが、
一有偽情、触塗難継、功績遂損敗矣。
一に偽情有れば、触塗するも継ぎ難く、功績ついに損敗せり。
一度偽善であることがバレてしまうと、その後いつわりを重ねるのも難しくなり、それまでの評判はすべて崩壊してしまった。
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北斉・顔之推「顔氏家訓」名実篇第十より。おカネがなくなると彼らしさが無くなってしまった、ということです。買い物もできなくなります。
「おでんぐらいで浪費と言うのか」と思うかも知れませんが、去年はそう思わなかったけど、今年は思います。去年使ったタクシー代もけちってしまいました。やっぱりみんなで貧しくなってて、おカネが使い難くなっているんだと思いますよ。
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