冥卒誤至(冥卒誤りて至る)(「清朝野史大観」)
今日は夏の服しかないのに夜かなり濡れてしまい、体力弱ってるので風邪でもひいてそろそろ冥卒が来るかもと思いましたが、まだ来ません。まだしばらく来ないのかも。もうすぐ来るのかも。

・・・・・・・・・・・・・
清代中期の宰相、鄂爾泰は、
未遇時家甚窮、与夫人借屋以居。
未だ遇わざる時家甚だ窮し、夫人とともに屋を借りて居れり。
まだ出世できなかったころ、たいへん生活が苦しく、奥さんと二人だけ(召使いなし)で借家住まいをしていた。
嘗夫婦臥病、不挙火三日矣。
嘗て夫婦病いに臥し、挙火せざること三日なり。
ある時、夫婦ふたりとも病気になって寝込んでしまい、三日間ごはんを炊くこともできなかった。
一日早晨忽有似公使者、叩門而入。
一日の早晨、忽ち公の使者に似たる者有りて、門を叩かて入れり。
ある日の早朝、突然、役所の走り使いみたいな人がやってきて、門を叩いて入り込んできた。
「病気で寝ているのに、朝っぱらからなんですか・・・」
「病気が進んでいることであろう。だからあの世からのお迎えであ・・・」
と言い出したところで、あの世の使いはびっくりして鄂の顔をまじまじと見詰め、しばらくして、
此鄂中堂也。
これ、鄂中堂なり。
「鄂大臣さまでしたか!こんな狭い家に住んでおられるとは!」
と叫んで、
「失礼しました!」
と、
急趨出。
急に趨り出づ。
大慌てで門から走り出て行った。
少頃隣家聞哭声矣。
少頃にして隣家に哭声を聞く。
しばらくすると、隣の家から、死者を悼む泣き声が聞こえてきた。
「なんだ? それにしても、何が大臣だ・・・」
蓋勾魂冥卒誤至公家、故予知後来福澤耳。
けだし、勾魂の冥卒の誤りて公の家に至り、故に後来の福沢を予知するのみ。
つまり、霊魂を連行しに来たあの世の下っ端役人が、間違って鄂どのの家に来てしまったのだ。そのせいで、いずれ後年に出世することが分かった、ということである。
・・・・・・・・・・・・・
「清代野史大観」巻五「清人逸事」より。冥卒(俗語では「走無常」と呼ばれます。)は来なくていいのでネコでも来ないものでしょうか。NHKは来なくなってありがたい。
ホームへ
日録目次へ
コメントを残す