甚于泥塗(泥塗より甚だし)(「酔古堂剣掃」)
いいことがあって後で悪いことがあるよりは、先に悪いことがあっていいことがあるといいですね。

わらで小屋を手抜き新築したら、たまたまおおかみが現れたりするでウオー!
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登山遇厲瘴、放艇遇腥風、抹竹遇膠糸、修花遇酲霧、歓場遇害馬、吟席遇傖夫。
山に登りて厲瘴に遇い、艇を放ちて腥風に遇い、竹を抹して膠糸に遇い、花を修めて酲霧に遇い、歓場に害馬に遇い、吟席に傖夫(そうふ)に遇う。
山歩きに行ったら、ひどいガスにぶつかった。
舟遊びをしようとしたら、なまあたたかいいやな風が吹いてきた。
竹をかきわけて散策していたら、クモの糸に引っかかってしまった。
花を見に行ったら、どんよりとした(「酲」(てい)は「悪酔い」)霧が立ち込めていた。
盛り場で楽しくふらついていたら、荒れ馬が暴走してきた。
作詩しあう会場に、風雅を知らない田舎者がいた。
最後が一番気が利いてますね。
若斯不遇、甚于泥塗。
かくのごときの不遇、泥塗より甚だし。
これほどのツキのなさ、泥道を行くよりひどい。
これに対し、
偶集逢好花、動歌逢明月、席地逢軟草、攀磴逢疎藤、展巻逢静雲、戦茗逢新雨。
偶集に好(よ)き花に逢い、動歌するに明月に逢い、地に席するに軟草に逢い、磴(とう)を攀じるに疎藤に逢い、巻を展(の)ぶるに静雲に逢い、茗を戦わすに新雨に逢う。
たまたま(友人らと)集まってみたら、ちょうどきれいな花が咲いていた。
散歩しながら歌っていたら、明るい月が射してきた。
地面に座ってみたら、ちょうどやわらかな草の上だった。
石段をふうふういいながら昇り切ると、まばらに藤の花が咲いていた。
(絵か書の)巻物を(高い楼閣の屋上階で)開いて鑑賞しようとしたら、まどの外にちょうど穏やかな雲が見えた。
友人たちと湧かしたお茶の銘柄を当てっこしていたら、ざっと一雨来て涼しくなった。
如此相逢、逾于知己。
かくのごとく相逢うは、知己に逾(まさ)れり。
こんなふうに出会えた相手は、親友よりもありがたい。
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明・陸紹珩編「酔古堂剣掃」巻七「韻」より。災害時にトイレカーに出会ったらほんとにありがたいかも。
それにしても、知己にまさる、と言いながらお茶とか花見とか、家族やともだちと過ごしている時間が長そうです。充実してるかも知れませんね。知らんけど。
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