笑面夜叉(笑面の夜叉)(「宋稗類鈔」)
「笑面夜叉」は「にこにこ鬼さん」という訳で如何でしょうか。

こんな美人なら夜叉でもおーけ・・・しまった、すでに性やビジュアルによる差別を含んでしまった!
ああ、我はなんという不適切な人間であろうか。反省しなければ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
と反省したと見せかけて・・・
北宋末の文人政治家・蔡卞(さい・べん)、字・元度は、同じ新法党に属する兄貴の蔡京、字・元長とは政治的立場も性格もかなり違い、最後は宰相になった兄貴に左遷され、失意のうちに死んでしまう人ですが、若いころは、
対客、嬉笑溢于顔面。
客に対するに、嬉笑顔面に溢る。
人と対面しているときは、嬉しそうな笑いが顔いっぱいに溢れていた。
これはいいひとかも知れません。
雖見所甚憎者、亦加親厚無間。人莫能測、謂之笑面夜叉。
甚だ憎む所の者に見(あ)うといえども、また親厚を加えて間無し。人よく測る莫く、これ「笑面夜叉」と謂えり。
すごく憎んでいるはずの人と会っているときも、やはり親しさや厚意を加えて距離を置くことがなく、当時のひとびとはその真意を理解できなくて、彼のことを「にこにこ鬼さん」と呼んだ。
泣いた赤鬼のようないい人かも。
だが、首都の警察を掌ることになって、
以惨毒聞。
惨毒を以て聞こゆ。
残虐で極悪だと評判になった。
殺人如刈草菅、然婦態雌声、欲語先笑、未嘗正視。
人を殺すこと草菅を刈るが如く、然るに婦態雌声し、語らんとして先に笑い、いまだ嘗て正視せざりき。
ひとを処刑したり獄死させること、まるで草やスゲを刈り取るかのよう(にサクサクと殺すの)であった。ところが、女性のように振る舞い、甲高い声で話し、話をしようとするときには、話す前に笑いだしたりする。また、相手の顔を正面から見て話をすることがなかった。
「女性のように振る舞い」ってどういう振る舞い?と思うかも知れませんが「おんなみたいにクネクネして」とか訳せないじゃないですか。
或置人死地時、亦不異平日。
或いは人を死地に置くの時も、また平日に異ならず。
ひとを処刑する判断をするときも、全くいつもどおりなのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
清・潘永因編「宋稗類鈔」巻二「讒険篇」より。蔡卞は新法党の大立者で、王安石の娘婿ですから、兄貴の蔡京とセットで国を滅ぼした元凶のように言われますが、実際は靖康の変より十年近く前に死んでおり、靖康の「六賊」にも入っておりません。ひとを殺す時以外はいいひとだったのかも。いずれにせよ、彼のようにいつもにこにこして生きていきたいものですね。
匿名ブログだから書きやすくていいなあ。全勝さんのように本名で書いていると無理でしょう。このひとは本名に近いのかな?
コメントを残す