寒気逼人(寒気人に逼る)(「唐摭言」)
7月末・8月初の「三伏」の時期が一番暑い、あとは耐えていれば・・・と思っていましたが、今日は暑かった。しかも明日明後日は今日より東京で+4度?どうなっているのか。フェーン現象か、政府が何でも悪いのか。それとも一億一千万総懺悔が必要なのか。でもさすがに明日は今日より暑くはならないと思います。気象庁が何と言おうがこちらにも良識ってもんがあるぜ。

夏でも南半球や寒帯にはいるよ。
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唐の大中年間(847~859)、韋澳と孫宏の二人は翰林院にいて、急な呼び出しのある時のために宿直することも多かった。
盛暑、上在太液池中、宣二学士。
盛暑のころ、上、太液池中に在りて、二学士を宣す。
たいへん暑い盛りのころ、宮中の太液池の中の島におられる皇帝(この時の皇帝は、唐朝最後の明君といわれる宣帝です)から、翰林院に対して、学問のある者二人をすぐに遣わせ、と呼び出しがあった。
そこで二人で行ってみると、皇帝のお側に仕える宦官どもがずいぶん厚着をしているので不思議であったが、
就坐、但覚寒気逼人。
坐に就くに、ただ寒気の人に逼るを覚ゆ。
席につくと、ただ寒い空気が身に迫ってくるばかりだったのである。
そこで、
熟視、有龍皮在側。
熟視するに、龍皮側らに在る有りき。
よくよくまわりを見てみると、なんと! 龍の皮が側にあったのだ!
これは寒いはずである。(龍の皮があると何故寒くなるかについては説明がありません。)
「龍皮でございますな、寒いはずだ」
「ほう、さすがじゃな」
皇帝は学士たちが龍皮についても知識があることを知って、ことのほかご機嫌よく、
「あなたたちに、新しい音楽とともに歌うべき歌詞を作って欲しいと思って呼び出したのだが、まずはこれで腹ごしらえせよ」
宣賜銀餅餡。食之甚美。既而酔以醇酎。
宣して銀餅餡を賜わる。これを食らうに甚だ美なり。既にして酔うに醇酎を以てせり。
皇帝のおコトバによって「銀色あんこ入りの餅」をいただいた。これを食ってみたところ、ものすごく美味かった。さらに、高級で度数の高いお酒をいただいて、酔ってしまった。
二人は結局、酔ってしまって歌詞を作ることのできるような状態ではなくなって、皇帝に大笑いされて翰林院に戻された。
さらに、
二公因玆苦河魚者数夕。
二公、玆(これ)に因りて河魚に苦しむこと数夕なり。
二人は、この飲食のせいで、数日の間、河の魚のように腹がいっぱいになって苦しんだ。
上竊知、笑曰、朕日進十数、未嘗有損。
上竊かに知りて、笑いて曰く、「朕は日に十数を進むるも、いまだかつて損なう有ることあらず」と。
皇帝は、そのことを伝え聞いて、大笑いしておっしゃられた、
「わしは毎日十数個食っているが、これまで気持ち悪くなったことなどないがのう」
銀餅餡、皆乳酪膏腴所制也。
銀餅餡は、みな乳酪膏腴の制するところなり。
「銀色あんこ入りの餅」は、チーズや脂肪から作るものである。
皇帝は別の病気になってしまうのでは、と心配になりますが、実際には成人病の前に仙薬として服用した水銀中毒と思われる症状で亡くなっております。大笑いするところなどもお脳に回っているのかも知れません。
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五代・王定保「唐摭言」巻十五「雑記篇」より。腹が苦しいのはいつものことながら、龍の皮があると涼しくなることを大発見です。これさえあれば地球が冷えて、大儲けができそうだ。研究開発投資などを受けてなんとか手に入れ、テレビなどにも出てみたいものじゃ。
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