夜見美人(夜、美人を見る)(「智嚢」)
明日はあんまり暑くて幻覚でも見てしまうのでは。

ちょー美人の幽霊にでも会えるんじゃないの?
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北宋のことのことですが、広州の属官であった崔慶成というひとが、管内に出張に行った帰りの宿場で、
夜見美人。
夜、美人を見る。
夜、美人を見た。
よかったですね。だが、このひとは、
蓋鬼也。
けだし鬼なり。
どう考えても幽霊だった。
その女は、
擲書。言、川中狗。百姓眼。馬鞭児。御厨飯。
書を擲つ。言う、「川中の狗。百姓の眼。馬鞭の児。御厨の飯」と。
メモを放り投げてきた。読んでみると、
川の中のイヌ。百姓のまなこ。馬鞭の子ども。御厨のごはん。
書いてある。
それを手渡すと、女は意味ありげに笑って、ふといなくなった。
慶成不解、述于丁謂。
慶成解せず、丁謂に述ぶ。
慶成はとうとう何の意味かわからず、役所に戻ってきてから、丁謂さまに訊いてみた。
丁謂はもと中央の大臣であったが、政争に敗れて広州の司馬(警察署長)に左遷されてきたひとで、文人としても名高い方である。
「どういう意味なんでしょうか?」
「・・・おまえさん、惜しいことをしたなあ」
「え?」
川中狗、蜀犬也。百姓眼、民目也。馬鞭児、瓜子也。御厨飯、官食也。
川中の狗は蜀の犬なり。百姓眼は民の目なり。馬鞭児は瓜の子なり。御厨飯は官の食なり。
「川中」は四つの川の中にある州、つまり「蜀」のことで、「川中狗」は「蜀犬」だ。「百姓」はもちろん「民」だから、「百姓眼」は「民目」だ。「馬鞭」は「うり」の呼び名の一つだから、「馬鞭児」は「瓜子」。「御厨」は役所の食堂のことだから、「御厨飯」は役所の飯、すなわち「官食」だな。
「いや、なんだかわかりませんが」
「蜀犬」は「獨」(独)、「民目」は「眠」、「瓜子」は「孤」、「官食」は「館」になる。続ければ?
独眠孤館。
独り孤館に眠る。
---そこの一つ家でひとり眠って・・・お待ちしてますわ。
・・・か、しまった!!!
と慶成は残念がったが、果たして幽霊と一夜を持てばどうであったろうか。丁謂さまの豊富な人生経験の中には、そんなこともあったのであろうか。
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明・馮夢龍「智嚢」巻十八「捷智部敏悟篇」(知恵が回ってぴんと悟ったエピソード集)より。丁謂さまといえば役人政治家として知恵が回り過ぎてうまく泳げなかったという非常に興味深い人です。ああおもしろい人だなあ。興味あるでしょう。だが、今日はここまで。
こんなのすぐに元の木阿弥ですよね・・・。この「木阿弥」って誰なんでしょう。広辞苑で調べるか。
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