況無首也(いわんや首無きをや)(「閲微草堂筆記」)
15日が特別な日という感覚はもう無いのですが、今日で今月も半分過ぎたああどうしよう、と思っていたら、まだ明日だったか、と気づきました。この暑いのに毎日ワンオペで忙しく、日付もわからない壊れた状態になってきてるんです。頭ないのと一緒です。

首無し鎧、怖いやろ?頭無くなったらコワいものないから消費もできるかも。
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清の時代です。司農官の曹竹虚が言った―――
従兄が、所用あって、安徽から揚州に出かけたんじゃよ。
途経友人家。時盛夏、延坐書屋、甚軒爽、暮欲下榻其中。
途に友人家を経。時に盛夏にして、書屋の甚だ軒爽なるに、延座し、暮れてその中に下榻せんと欲す。
その途中に友人の家があるので寄った。この時は夏の一番暑いさかりであった。友人は離れの書斎に案内してくれたが、ここは屋根が高く非常の爽やかで、いとこは今晩はこの部屋にとまらせてもらおうと思った。
ところが友人が言うには、
是有魅。夜不可居。
これ、魅有り。夜居るべからず。
「滅相もない。この部屋にはバケモノが出るんじゃ。夜はいられるものではないぞ」
しかし、従兄は
強居之。
強いてこれに居れり。
強引にその部屋に居続けた。
すると・・・
夜半、有物自門隙蠕蠕入、薄如挟紙。入室後、漸開展、作人形、乃女子也。忽披髪吐舌、作縊鬼状。
夜半、物有りて門隙より蠕蠕(ぜんぜん)と入る、薄きこと挟み紙の如し。入室の後、ようやく開展して、人の形を作(な)作す。すなわち女子なり、忽ち披髪し、舌を吐きて、縊鬼の状を作せり。
夜半ごろ、何ものかが門の隙間からずるずると入り込んできた。挟み紙のように薄っぺらい。部屋に入った後、だんだんとその紙が折れたり開いたりして人間の形になった。女性である。この女性が、突然髪をざんばら髪にし、舌をびよーーんと出して、首を吊った幽霊のように振る舞った。
だが、従兄は笑って言った、
猶是髪、但稍乱。猶是舌、但稍長。亦何足畏。
なおこれ髪のごときも、ただややみだれたり。なおこれ舌のごときも、ただやや長し。また何をか畏れん。
髪の毛のようじゃが、こんなに乱れているとは。舌のようじゃが、こんなに長く延びているとは。(いったい何であろうか。)ただし怖いとは思わないなあ。
すると、その女は、
忽自摘其首置案上。
忽ち自らその首を摘まみて案上に置く。
突然、自分の首を手で持ちあげると(体から外して)テーブルの上に置いた。
従兄は言った、
有首尚不足畏、況無首也。
首有るもなお畏るるに足らず、いわんや首無きをや。
「頭部がある間でも怖がらなかったんだぞ。頭部が無くなったやつを怖がることがあるものか」
すると、
鬼技窮、倐然滅。
鬼、技窮まり、倐然(しゅくぜん)として滅せり。
幽霊は、もうすることが無いらしく、ふっと消えてしまった。
揚州での所用を終えて、
及帰途再宿、夜半、問隙又蠕動、甫露其首。輒唾曰、又此敗興物耶。
帰途に及んで再宿するに、夜半、門隙また蠕動し、甫(はじ)めその首を露わす。すなわち唾して曰く、「またこの敗興物なるや」と。
帰り道にもまたその家に泊めてもらったところ、夜中、門の隙間がまたずるずると動き、まずはその頭が出て来た・・・のだが、いとこの顔を見ると、そこで唾を吐いて、「またこの役に立たないのが来たのかよ」と言った。
竟不入。
ついに入らず。
とうとう部屋の中までは入ってこなかった。
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清・紀暁嵐「閲微草堂筆記」巻一より。わたしもこんな感じです。毎日「敗興物」(役立たず)と罵られ・・・今日も誰かに怒鳴られたような気がしますが、誰に言われたかも忘れてしまい、バケモノが来ても逃げることもできないのではないか、というぐらい、毎日眠い。
東京へ行ったら眠って暮らせるかも。
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