羅江狗(羅江の狗)(「東軒雑録」)
ウナギも牛丼も食わずに働いております。暑いのでおかしくなって暴れ出しそうなぐらいです。会社の人がそう思ってないのは、組織忠誠が無いので会社の役に立つ仕事はしていないだけだと思います。自分のしたいことだけしているのだから、熱中症になってもしかたがない、と思っているのでは。

肝冷斎が働いておるのは仏さまは見ておるぞ。知らんけど。
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北宋・仁宗の慶暦年間、宮中の衛兵がおかしくなって暴れ出し、人を傷つけて自らも殺されるという事件があって、
震驚宮掖。
宮掖を震驚す。
宮中をたいへんびっくりさせた。
時台官宋禧上言。
時に台官・宋禧上言す。
この事件に当たって、官吏の非違を取り締まる御史台の宋禧が上奏した。
曰く、
此蓋平日防閑不至、所以致患。臣聞蜀有羅江狗、赤而尾小者、其儆如神。
これけだし平日の防閑至らず、患を致す所以ならん。臣聞く、蜀に羅江の狗有り、赤くして尾小さきもの、その儆(けい)は神の如しと。
「儆」は「つつしむ」「いましめる」の意。「警」と同じです。
今回の事件は、日ごろの油断の引き締めが足らなかったことが、問題を惹き起こしてしまったと考えられましょう。わたくしの把握する情報では、四川の羅江の地にイヌがおりますが、その中でも、赤くてしっぽが短いやつは、警戒心が強くて神わざに至るほどである、と。
願養此狗於掖庭、以警倉卒。
願わくばこの狗を掖庭に養いて、以て倉卒を警しめん。
そこで提案申し上げます。このイヌを宮中に飼養いたしまして、衛兵たちの動きを警戒させては如何でしょうか。
なるほど。しかし、なんでそんなところのイヌのことに詳しいのだろうか。それに、羅江のイヌにそんなことができるなら、衛兵自体が要らないのではないか。だんだんとみんな宋禧の上奏に実効性が無い、宋禧は高齢で耄碌しているのではないかとウワサするようになり、
時謂之、宋羅江。
時にこれを「宋羅江」と謂えり。
ひとびとは、彼のことを「羅江の宋さん」と呼ぶようになった。
ついに皇帝の耳にも達して、お暇を賜ったということである。
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宋・魏泰「東観雑録」巻十二より。現代的は「AIに任せとけばいいだろう」というような感触でしょうか。確かにもう頭を使うことはAIに任せて、われわれは日中ぐるぐる回ったり、「今日も暑いですなあ」と言ったり、さらには「AIができて便利になりましたなあ」と言うだけの職種に専念したいと思います。「定型的世間話業務」ですね。AIの前からそうだったと言われればそのとおりか。
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