南方有鳥(南方に鳥有り)(「荘子」)
出勤して組織忠誠を見せねばなりませんぞ。日本の組織忠誠は主君やおえら方に見せるのではない、同僚・仲間に見せるのだ。貢献度ではなく、そこにいる、いつもいた、が組織への忠誠なのですから。わが国では・・・ダメだ、本当のことを言ってしまった!

怪しからん。「群れない、媚びない、へこたれない」。三ないまるやま縄文だましいを忘れておる!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
チャイナ戦国の時代のこと、友人の恵施が魏の国の宰相となったというので、
荘子往見之。
荘子、往きてこれを見んとす。
荘周先生は、魏の国に行って様子を見ようと思った。
或謂恵子曰、荘子来、欲代子相。於是恵子恐、捜於国中、三日三夜。
或るひと恵子に謂いて曰く、荘子来たりて、子に代わりて相たらんと欲す、と。ここにおいて恵子恐れ、国中を捜すこと三日三夜なり。
あるひとが、恵施先生に言うに、「荘先生がお見えになって、あなたに代わって宰相になろうとしているとかなんとか・・・」。恵施は恐れて、その活動を防止しようと国中に荘子の行方を捜索させた。三日三晩にわたって捜索したのであるが・・・。
荘子往見之、曰、南方有鳥、其名鵷鶵。子知之乎。
荘子往きてこれを見て、曰く、南方に鳥有り、その名は鵷鶵(えんすう)。子、これを知れるか。
荘周先生は(捜索網に引っかかりもせずに)やってきて、恵施に会って、言った。
「南国に「えんすう」とう鳥がいるのじゃが、おまえさん、知っとるか?」
南方の鳥は、暑さに強いかも知れません。そういえば今日、相当の科学者のひとが「熱帯夜」という言葉は非科学的である、と言ってました。
それはさておき―――
夫鵷鶵発於南海、而飛於北海。非梧桐不止、非練実不食、非醴泉不飲。
それ、鵷鶵は南海に発し、北海に飛ぶ。梧桐にあらざれば止まらず、練実にあらざれば食らわず、醴泉(れいせん)にあらざれば飲まず。
「その「えんすう」という鳥は、南の海から飛び立って、北の海に向かった。(たいへん立派な鳥であるので)香り高いあおぎりの枝でなければ止まらないし、何十年に一回しか実らない竹の実でなければ食べないし、あまい水の湧く泉の水でなければ飲まない。
さて、
於是鴟得腐鼠。鵷鶵過之、仰而視之、曰、嚇。
ここにおいて、鴟(し)、腐鼠を得たり。鵷鶵これを過ぎるに、仰ぎてこれを視て、曰く、「嚇」(かく)と。
ずっと下の方で、トビが腐ったネズミの死骸を見つけて食べようとしていた。ちょうどその上空を「えんすう」が飛び過ぎる。トビはこれを仰ぎ見て、(エサを取られはしないかと思い)「くわっ」と威嚇した。
今子欲以子之梁国而嚇我耶。
今、子は、子の梁国を以て、我に嚇するや。
つまり、おまえさんは、おまえさんが差配する梁(魏の別名)の国(という腐ったネズミ)のために、わしを威嚇しとるわけだ。」
「うーん・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「荘子」秋水篇より。なんだ、早くそう言ってくれればよかったのに、というのが恵施さまのお気持ちでございましょうか。
でも、大臣の恵施さまにはともかく、われらは腐ったネズミを大切にするトビにこそ感情移入してしまいますよね。・・・あ、そうか、みなさま、その咥えているものが腐鼠だということにも気づいておられない・・・おおっと、本当のことを言ってしまうところでした。いやいやなんでもない、ああみなさん高級な食事で羨ましいですなあ。
家計調査ご苦労さまでした。むかし「統計は一番声の小さい民の声だ」と教えられました。無告の民の声でも、善き政治家には能く聴こえることでございましょうから、小さな声も活用いただけることでしょう。しかしわたしなど「恥ずかしいから五百円ぐらいの中級品買ったことにしとけ」「これは変な人だと思われてしまうから買わなかったことにしようっと」などと考えて、絶対協力できそうにもありません。だいたいめんどくさいから三日で終わってしまうし。
コメントを残す