含酒三潠(酒を含みて三潠す)(「後漢書」)
なんとか乗り切ったものの疲れは甚だしい。

オオカミのように先読み能力のすぐれたやつならなんとかなるぜ。
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昨日の続きです。後漢の郭憲は光武帝に仕えた。
従駕南郊。憲在位、忽回向東北、含酒三潠。
南郊に駕するに従う。憲位に在して、忽ち東北に回向し、酒を含みて三潠す。
洛陽南の郊外に帝の車列が出かけるのについて行った。郭憲はさだめられた列の中にいたのだが、突然、東北の方向に顔を向け、そこでお酒を口に含んで三回吐き出した。
「いけませんぞ!」
すぐに
執法奏為不敬、詔問其故。
執法不敬なりと奏し、詔してその故も問う。
宮中の礼法などを守らせる執法官がその「不敬」な行動を帝に報告し、帝は命じてそんなことをした理由を問うた。
郭憲は言った、
斉国失火、故以此圧之。
斉国火を失う、故にこれを以て圧(おさ)うるなり。
「北東方向に数百キロ離れたところにある斉の都で火事がありましてな。そこで、それを消すまじないをしたのでございます。」
「ほんとか?」「ウソをつけ」などもめましたが、
後斉果上火災、与郊同日。
後、斉に果たして火災ありと上し、郊と同日なり。
その後、斉の国に果たして火災があったと報告があった。その日は、帝らが郊外遊びをしたちょうどその日であったという。
数年後、光武帝は西の方、蜀の隗囂の征伐の直接指揮のため、洛陽から西に向かった。このとき、郭憲は申し上げた。
天下初定。車駕未可以動。
天下初めて定まる。車駕いまだ以て動くべからざるなり。
天下は治まってまだ日があまり経っておりません。陛下の車列はまだこの地を離れてはならないのでございます。
そして、
当車抜佩刀以断車靷。
車に当たりて佩する刀を抜きて、以て車靷を断ず。
車の前に行って、腰につけていた刀を抜いて、馬車のかわひもを切捨ててしまった。
それでも帝は従わず、軍列をすすめて、隴の地まで来たところで別の地で反乱が起こったとの報が入り、
乃回駕而還。
すなわち駕を回らせて還れり。
ただちに車列の方向を変えて、洛陽に戻った。
この時、帝は嘆いて言った、
恨不用子横之言。
恨むらくは子横の言を用いざることを。
「それにしても残念だったのは、子横(郭賢の字)の意見を採用しなかったことだな」と。
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「後漢書」巻七十二上「方術列伝」より。あんまり術というほどでもありません。しかし、「大したことないな」とか言ってるとひどい目に遭います、よね。津波も台風も酷暑も。
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