其与亡矣(それ、ともに亡びん)(「郁離子」)
亡びるのはしようがないけど、あいつらと一緒はイヤです!よね。

おれたちも行くところを知られることはないぜ。忍者こみゅにてぃが崩壊しているので。
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古代のことのようなふりをして書くのですが、現代についてのことだと理解してほしい。
・・・その昔、工之僑(こうしきょう)という名工がいた。
工之僑得良桐焉、斫而為琴。弦而鼓之、金声而玉応、自以為天下之美也。
工之僑、良桐を得て、斫りて琴を為(つく)る。弦してこれを鼓すれば、金声して玉応し、自ら以て天下の美なりと為せり。
工之僑は、良い桐の木を入手したので、これを削り切って、琴を作った。弦をかけて弾いてみると、金属のような冷たい音に玉のような温かな音が共鳴し、自分でもこれは天下の名作だと思った。
そこで、
献之太常、使国工視之、曰、弗古。還之。
これを太常に献じ、国工をしてこれを視せしむるに、曰く、「古ならず」と。これを還す。
これを礼を掌る大臣である太常に献上した。太常が国を代表するような技術者にこれを見せたところ、「(中身はともかく)いにしえのものではありませんな」と言った。琴は、工之僑のところへ返されてきた。
工之僑以帰、謀諸漆工、作断紋焉。又謀諸篆工、作古款焉。匣而埋諸土。
工之僑以て帰り、これを漆工に謀りて、断紋を作る。またこれを篆工に謀りて、古款を作る。匣(はこ)してこれを土に埋めたり。
しかたがないので工之僑は持って帰り、うるし職人と相談して、うるしを塗って途中で切れたような模様をつけた。また、古代文字の書記と相談して、古代風の作成記録を刻みつけた。そして、箱に入れて、これを土の中に埋めた。
「諸」(しょ)は「之於」(し・お。「これを~に」)を一字に縮めたもの、と考えていただくとよろしい。
期年抱之出、以適市。
期年にしてこれを抱きて出だし、以て市に適(ゆ)く。
一年後に、箱を掘り出して中の琴を抱き上げ、市場に行った。
市場で琴を並べていると、
貴人過而見之、易之以百金、献諸朝。楽官伝視、皆曰、希世之珍也。
貴人過ぎりてこれを見、これを易(か)うに百金を以てして、これを朝に献ず。楽官伝え視、みな曰く、「希世の珍なり」と。
えらい人が通り過ぎ、この琴に目を止め、百万円で買い取った。えらい人がそれを朝廷に献上すると、音楽家たちは交代でこれを見て、みな言った、
「これは世にも希なる名作ですぞ」
と。
認められてよかったですね。ところが、
工之僑聞之、嘆曰、悲哉世也。豈独一琴哉、莫不然矣。而不早図之、其与亡矣。
工之僑これを聞き、嘆じて曰く、「悲しいかな、世や。あに独り一琴のみならんや、しからざることなし。早(つと)にこれを図らざれば、それ、ともに亡びん。
工之僑はそのことを聞くや、「ああ」とためいきをついて、言った。
「悲しいではないか、現世は。このようなことは単に琴をめぐる事案だけであろうか。そんなことはないであろう。早くこのことを考えて身を処する方法を考えないなら、そうだ、ともに亡んでしまうことになろう」
そう言って、
遂去、入于宕冥之山、不知其所終。
遂に去り、宕冥(とうめい)の山に入り、その終わるところを知らず。
とうとうどこかに行ってしまい、岩だらけで険しい、奥深く暗い山に入って行って、どこでどう身を終えたかわからない。
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明・劉基「郁離子」より。今日はとある君子が表彰を受けたので、お祝いをしてきました。たとえ経済が苦しくても、功績あるひとが表彰されているかぎりはいいのですが、功と罪とを取り違えるようになったら、いよいよ国は亡びることになろう。
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