兵行詭道(兵は詭道を行う)(「庸閒斎筆記」)
人に勝つのは、本来たいへんなことなんです。

戦わないと不戦敗だぞ。
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清の終り頃のことですが、イギリス国の領事官・阿査里(あさりー?)が言うには、彼が前年従軍したアフリカあたりの国でのこと、
所統之師船兵力不厚、懼一時不能制勝。
統ぶるところの師船兵力厚からず、一時には制勝あたわざることを懼る。
率いている陸海の兵力が少なすぎて、しばらく勝利を得ることができないかも知れないと心配になった。
そこで、考えた。ぽくぽくぽくぽく・・・・ちーん。
やがて、にやりと笑って、つぶやいた。
「相手は蛮人だ。これならいけるかも」
造千斤重砲子十余枚、至其国之海辺、夤夜用人扛抬上岸、行十余里、散置之地。
千斤の重砲子十余枚を造り、その国の海辺に至りて、夜に夤(よ)りて人を用いて岸に扛抬(もちあげ)て上がり、十余里を行きて、これを地に散置せり。
一個で600キログラム(一斤≒600グラムで計算)もある重い砲弾を十余個造らせ、その国の海岸近くまで(船で)運んで、夜に紛れて何人かでそれを担ぎ上げて岸に上り、さらに10キロぐらい(一里≒600メートル弱、で計算)陸地の奥まで持ち込み、そのあたりにばらばらに置いた。
そして、
帰船、乃発空砲数十声。
船に帰り、すなわち空砲数十声を発す。
すぐに(海岸近くの)船に戻って、深夜に空砲数十発を発射した。
うっしっし。
次日、其国挙兵拒戦。行至中途、見砲子、驚其大、且訝其撃至十数里之遠。
次日、その国、兵を挙げて拒戦す。行きて中途に至り、砲子を見て、その大なるに驚き、かつその撃ちて十数里の遠きに至るを訝しむ。
次の日、その国の民は兵をこぞって(イギリスを)拒もうとして、戦いにやってきた。しかし、まだ中途(海岸から十キロぐらい)で巨大な砲弾を発見して、「でかい!」と驚き、かつ、海岸から十キロもあるここまで撃ち込んできたかと推測した。
以為不能抵敵、遂遣使乞降。
以て抵敵する能わずと為し、遂に使いを遣わして乞降す。
これでは敵対して抵抗することなんてできないと観念して、とうとう使者を遣わして降伏を求めてきた。
于是宣布威徳、取成而還。
是において威徳を宣布し、成を取りて還れり。
そこで、イギリスの威厳と徳を宣伝して、領土化に成功して帰国した。
なのだそうである。
ただし、
其寔伊国本無此大砲、亦並不能製此大砲也。
それ寔(まこと)に伊(か)の国にはもとよりこの大砲無く、また並びにこの大砲を製する能わず。
実際のところは、かのイギリス帝国にはこんなでかい大砲は無いのである。また、この大砲を実際に製作する能力もない。
それなのに、無い大砲が相手を屈服させたわけだ。
兵行詭道。外国亦然。
兵は詭道を行う。外国もまた然り。
用兵には(「孫子」や「呉子」に見られるように)古来、うそやはったりの裏道的な手法がある。外国もそうだったのだなあ。
そんなことで騙されるような国が本当にあるようである。われわれは文明国でよかった。
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清・陳其元「庸閒斎筆記」巻三より。どなたか
かーーーつ!!!!!
そこまでして勝ちたいのかね。もっと大切なものがあることを東洋人は知っているぞ!
と一喝してほしいところですが、諸葛孔明を神の如く仰いでいるのですから、東洋人の精神性にそんな高望みはいたしますまい。プリンも好きだし。
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