略無酔態(ほぼ酔態無し)(「唐摭言」)
「へべれけ」を漢字で書ければ状元合格できる・・・かも! 不可能を可能にするという意味で。それにしても以下のお話によれば、さすがに状元は心身ともに優れていることがわかります。

お茶や水では↓みたいには飲めないでカッパ!きゅうり水なら飲めるッパ!
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唐の王源中は元和二年(807)の進士科状元(首席合格者)で、さらに特別難しいとされる博学宏詞科にも合格したという俊才であった。文宗皇帝(在位827~840)の時、翰林院承旨学士(詔勅の起案責任官)となったころということだから、四十代の分別盛りのことであるが、
暇日与諸昆季蹴鞠于太平里第、毬子撃起、誤中源中之額、薄有所損。
暇日、諸昆季と太平里第に蹴鞠(しゅうきく)するに、毬子撃起し、源中の額に誤中していささか損なうところ有り。
「昆」は「兄貴」、「季」は末の弟、「昆季」は「昆仲(仲は二番目の兄貴)」や「昆弟」とおなじく「兄弟」の意味です。
休暇日に、兄弟たちと長安・太平里の官邸の庭で「けまり」をしていたところ、ボールが突然撥ねて源中の前額に命中してしまい、そこそこのケガをしてしまった。
「けまり」の毬は革製が多く、中に羽毛を詰めるので骨折するといった硬さは無いのですが、ケガぐらいはすると思います。やったことがある人に聴くと、かなりハードなスポーツで、瞬発力、持続力、反射神経、運動センスを要求され、これを「みやびやか」にやれる人はかなり鍛えているだろう、ということです。
ちょうどその直後、
俄有急召、比至、上訝之。源中具以上聞。
俄かに急召有りて、至る比(ころおい)に、上これを訝しむ。源中、具さに以て上聞せり。
突然、皇帝から、急ぎ相談したいことがある、とお召しがあったので、すぐ出かけた。到着すると(ケガが治っていないので)皇帝は「どうしたのだ?」と訊いた。そこで、源中は、細かいことを話したのであった。
皇帝は相談事など忘れてしまったらしく、言った、
「そうか、兄弟でやっとったのか。
卿大雍睦。
卿、大いに雍(やわら)ぎ睦めり。
あなたは、ほんとうに兄弟と和やかで仲良しですね」
ここまででも嘉話(「いい話」)として十分成り立つと思うのですが、この後にさらに驚くべき展開が!!!!!
・・・(CMが入るところですが省略します)・・・
皇帝は、兄弟仲良しなのを愛でて、
賜酒両盤。
酒、両盤を賜う。
二つの巨大なお皿でお酒を賜った。
毎盤貯十金碗、毎碗容一升許、宣令并碗賜之。
毎盤に十の金碗を貯え、毎碗に一升許(ばか)りを容れ、碗に并せてこれを賜うと宣令す。
見ると両方の巨皿にはそれぞれ十の黄金の御碗が入っており、それぞれの御碗にはお酒が一升ぐらい入っている。帝は、「この黄金の碗と、その中の酒を与えるぞ。ただし、碗も酒も、飲み干した分だけじゃ」とご発言になられた。
「はは」
源中飲之無余、略無酔態。
源中、これを飲みて余り無きに、ほぼ酔態無し。
源中は、これを飲んですべて尽くし、しかし、ほぼ全く酔った様子も無かった。
かくしてお酒二十升を一人で頂戴し、黄金の碗二十枚を下賜いただいて、兄弟たちのところに持ち帰ったのであった。
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五代・王定保「唐摭言」巻十五「雑記」より。この篇に集められているのは、ほぼ試験とは関係ない話ばかりです。
唐代の一升はだいたい0.6リットルだそうですが、それでもゆうに12リットル、現在の一升瓶5本ぐらいです。依存症的に飲むやつはいるかも知れんが「酔態」を見せない、とは。一体何を飲んだのだ? でも仕事は無くなってよかった。
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