何痩如此(何ぞ瘦せたることかくの如き)(「何氏語林」)
↑カロリー不足の子どものことではありません。今日はウマのお話です。

為政者のみなさん、「子ども家庭の日」にはしなくていいんでヒン?
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南朝宋の時代のことですが、皇帝が、若い貴族・張思光と面会し、家柄も能力も悪くはないので、
面許為司徒長史。
面許して司徒長史と為す。
司徒長史は丞相府の事務局長というところでしょうか。
面会時に、司徒長史に任命することを約束した。
ところが、
勅竟不下。
勅、ついに下らず。
正式な任命辞令がなかなか降りない。
「ふーむ」
張乗一馬、甚痩。
張一馬に乗ずるに、甚だ痩せたり。
張は出勤してくるとき、ウマに乗ってくるのだが、これがたいへん痩せていた。
帝は訊いた、
卿馬何痩。給粟多少。
卿の馬、何ぞ痩せたる。粟を給すること多少ぞ。
「おまえの馬は、どうしてそんなに痩せているのじゃ。エサはどれぐらい与えているのか」
日給粟一石。
日に粟一石を給す。
「毎日、一石分のエサを与えることにしておりますが」
一石は十斗、一斗は十升のはずです。現代の一升(≒1.8リットル)で計算すると、「うひゃあ!」というような量ですが、実は六朝期の一升は、現代の一合ちょっと(約0.2リットル)だそうですので、一石は20リットル。おそらくかなり大量ですが、ウマなら食えない量ではないぐらいでは。
食粟不少。何痩如此。
食粟少なからず。何ぞ痩せたることかくの如き。
「エサが少ないわけではない。どうしてこんなに痩せておるのか」
張は澄まして答えた、
臣許而不与。
臣、許して与えざりき。
「わたしは、そうすることにしてはおりますが、実際にはそんなに与えておりませんからね」
「・・・」
明日、即除司徒長史。
明日(みょうにち)、即ち司徒長史に除せらる。
翌日、早速、司徒長史の辞令が出た。
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明・何良俊「何氏語林」巻二十七「排調篇」より。「おもしろおかしく言った」篇というようなところでしょうか。もちろん、もらった給料でウマにメシ食わせたんでしょうね。
「ウマくいったぞ」
「うっしっし、おれが瘦せ型でよかったでヒーン」
そしてぶくぶくと太ってしまったならば、笑いごとではありません。肥満はほとんどは遺伝によるものと言われておりますが。
なお、みなさん覚えてないと思いますが、張思光はこれまでにも何度か出てきて、だいたい同じようなことしています(7・2・11、26.12.25)。こんなひとにも何か学ぶところはあるであろうか。
おっと、これは危険思想だ! こんな話に乗せられて、捨ててはいけませんぞ!
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